第3章 磨励自彊ー2日目ー
ー菅原sideー
「…どこから見てたんだよ?」
「偶然な、飲み物買いに行こうとしたらスガが抱き締めてた姿が見えてな」
「じゃあ俺が京香さんにキスしたのも、フラれそうになったのも見てたのか」
「すまん」
ベンチに2人座り、話を聞くと謝りながらも頷いた覗き男。
もとい烏野主将、澤村大地。
「スガは凄えなって思ったよ。俺はあんなにストレートに気持ちを伝えることが出来ない」
「え、じゃあ大地はまだ好きだって言ってないのか?京香さんに」
「あーいや、伝えてはある。その、勢いで…」
「勢いって…大地らしくないな」
夜空を見上げながら話し始めた大地。俺が凄いって言うけど大地の方が余程凄い。好きな人と大事な友人が付き合ってもないのにキスしてる場面に遭遇して、その友人を殴りかかろうとしない大地が。
「昨日もな、さっきのスガのようなことがここであってさ」
「昨日…?もしかして、影山?」
「あぁ、影山がな、京香さんにキスしてた。それで告白しようとしててさ、思わず呼んで阻止してしまったんだ」
「……」
「影山を帰した後な、ただ影山のことフォローするだけのつもりだったんだけど。気づいたら勝手に言ってた、俺も本気で好きですって」
俺らしくないよな、なんて苦笑してる大地の背中を思い切り叩いてやった。いつも自分の気持ち抑え込んでいるのを見てたから、ライバルになるのだってことだけど、俺は嬉しかった。京香さんを初めて見たあの日、この男にちょっかいかけて正解だったらしい。俺の行動に驚いている大地に思わず噴き出した。
「やっと大地も自分の気持ちに素直になったな。全く、毎回一歩引くからなお前は!あー良かった。でも大地、俺だって負けないからな」
「スガ…サンキュ。受けてたつよ。もう諦めない、誰にも負けない、俺の彼女にしてみせるよ」
「そうはさせるか!京香さんは俺が振り向かせる。先ずはその前に…」
「「全国、行くぞ!」」
大地と俺の言葉が重なれば、同じ思いだということに嬉しく思いつつ笑い合う。今年はチャンスなんだ、このチャンスは決して逃してはならない。大地と頷き合えば拳を合わせる。
必ず京香さんを全国に連れてく。
俺たちの手で、彼女を頂きの景色へーー