第1章 松野家長女、6人の兄がいます。
四男五男六男が私の膝を枕にしでから三十分。
『退いてくださいもう無理』
足が痺れたを通り越して感覚がない。
「え、痺れた?突いていい?」
『やめてこのドS野郎が!!』
「もっと言っていいよ?まぁドМですけどね」
どこがドМなんだろうか。この一松兄さんの悪そうな顔、ドSにしか見えない。
「痺れた!?じゃあ退くね!!瑠璃ありがとう!!」
『十四松兄さん~!!十四松兄さんが一番好き!!でも、ゆっくり起き上がってほしかったな!!』
痺れた膝から退いてくれたのはありがたすぎるけど、十四松兄さんがグンッといきなり起き上がったために、痺れた足がビリビリ響いた。
「ん~仕方ないなぁ、僕も退いてあげるね」
よいしょっと、と言いながらトド松兄さんも起き上がってくれた。片足の解放感がとても快感。でも…。
『一松兄さんも…退いてください…もう限界…』
「まだまだいけるでしょ?」
『もう本当に無理なの!てか、一松兄さんの方の足が一番痺れてるの…!』
「ふぅ~ん」
『だからそのドS顔やめてください!!』
一松兄さんはドS顔を浮かべたまま、焦らすように指を私の足に触れようとしてくる。
『もし足突いたら二度と一松兄さんには膝枕しないから』
「ごめん」
二度と膝枕しない宣言をしたら、ドS顔が嘘だったかのようにいつもの気怠そうな顔に戻り、起き上がった。
『やっと解放された…』
解放された私の足は、感覚が戻ってきてジンジンとしてきた。今足を突かれるのが一番やばい。
『はい!解散!!十四松兄さんは野球!一松兄さんは猫と戯れに!トド松兄さんは女の子とデート!はい解散!』
「ちょっと~勝手に命令しないでよね。残念ながら女の子とのデートの予定はありませ~ん」
「僕も今日はもう野球してきた!」
「たまには俺のいない時間も猫には必要だろ…」
『意味わかんない!特に一松兄さん!なんでもいいからとりあえず私の部屋から出てって!』
「瑠璃、反抗期?遅い反抗期だね」
「そういや瑠璃って反抗期なかったよね~!」
「もっと反抗してくれたらよかったのに…」
三人とも好き放題言いやがって…
『兄さんたちの方が私に反抗期だったじゃん』
中学生時代が蘇ってくる。