第1章 小鳥の巣(リヴァイ)
ピチチチチ・・・
作戦会議室の窓から見える屋根に、小鳥が巣を作っていることは、随分と前から気が付いていた。
でも、その巣の中に卵があることを知ったのは、つい最近のこと。
「どうした、リヴァイ」
ジッと窓を見つめている兵士長に、次の壁外調査の段取りを説明していたエルヴィンは眉根を寄せた。
隣にいたミケも鼻を鳴らし、チラリとリヴァイを横目で見る。
「上の空だぞ、何か気になることでもあるのか?」
「別に何も。続けてくれ」
「編成に関わる重要事項だ。集中しろ」
「話はちゃんと聞いてる」
エルヴィンがどのような作戦を立てようと、自分の役割は決まっている。
一匹でも多くの巨人を殺すこと、そして一人でも多くの仲間を守ること。
ピチチチチ・・・
小鳥が餌を咥えながら、巣に戻ってきた。
それまで卵を温めていたつがいと交代するためか。
親鳥達はただ、ああして雛をかえすためだけに延々と同じことを繰り返している。
産まれてくる我が子に、どのような想いを抱いているのだろうか。
無事に産まれても、天敵が多いだけの世界だろうに・・・
「ところで、ヨシノに関してだが…」
突然、エルヴィンの口から出たその名に、リヴァイの意識は窓の向こうから目の前の団長へと引き戻された。
「次の遠征では、彼女に班を持たせようと思っているのだが、リヴァイはどう思う?」
「・・・何故、俺に聞く?」
すると、エルヴィンは意味深な笑みを浮かべた。