第1章 キスの味
「…」
目線を逸らし、黙り込んでしまう和。
赤い顔は変わらず、言いにくそうに口をパクパクさせている。
ごめん、そんな顔させたい訳じゃねぇんだ。
キスされたことがないから想われてない、なんて考える奴は俺しか居ないのかもな。
「ごめん、和。やっぱ…」
なんでもない、そう続けようとした。
けど、和の顔を見たらそんなこと言えなかった。
「じゃ、じゃあ…目瞑ってくださいよ…」
顔を耳まで真っ赤に染め上げ、目に涙を溜め、真っ直ぐ俺の目を見つめて告げた。
「和?」
嬉しかった。
本気で考えてくれたんだって、そう思えたから。
「あの、だって、恥ずかしい…じゃん…」
消え入りそうな声を、俺の耳は拾い上げた。
あー、もう。
俺ってカッコ悪ぃ。
今絶対ぇ顔真っ赤だよな。
「いいよ、これで良い?」
体勢を変えることなく目を瞑り、和を待つ。
思えば、こうしてキスを待つなんてこと初めてかもしれない。