第6章 思惑の味
「ごめんごめん。
負けっぱなしってなんか悔しくてさ」
申し訳なさそうにしている顔に見えなくもない智の顔。
「立てる?」
と、優しく差し伸べられた手を借り身体を起こす。
「皆にお礼言わなくっちゃ。
気を使わせちゃったみたいだからね」
「みたいじゃなくて完全に使わせてます!
言うならどうぞお1人で」
プイッと顔ごと智から視線を逸らす。
「こらこら、そんなこと言わないの」
ギュッと胸板に顔を押しつけられる。
その時にフワッと香るこの匂いや温もりが…。
「…大好きです」
心地良い。
「んー?何が?」
「なんでもないですよ」
なんか悔しいから、そんなこと絶対に言ってやらない。