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【イケメン戦国】私と猫と

第25章 桜の咲く頃  二幕(六歳)


秀吉の名前を呼ぼうと、声を発しようとした時だ

「湖、「秀吉さん」と呼んでやれ。それだけで、この男の気は晴れるぞ。試してみろ」
「光秀…っ」

と、秀吉の横にいた光秀が言うのだ

「秀吉…さん?」
「っ、湖」

少しだけ染まる頬
そこに先ほどまでの悲しみの色はなさそうだ

「…秀吉さん」
「…おぅ」

ふふっと目を細めて笑うと、「またね」と笑みを浮かべる湖に、秀吉も「あぁ。またな」と笑って返した
その顔を光秀に向けた湖は、

「光秀さんも、またね」

「さん」と敬称を変えて呼ばれた光秀
一瞬驚くが「そうだな」と良い柔らかな笑みを返すのだ

「…見たか、佐助」
「見たとも、幸村」

狐のお面が外れたようなその表情に、幸村と佐助が唖然とした声を上げるのだ

((ちび湖(さん)、すげーな(すごいな)))

そうして二人の背中を見送ると、謙信を先頭に彼らもまた春日山城へと戻るのだった

「…なぁ、湖…あいつらのところに行ってみたいと思うか?」
「なんで?湖は、謙信さまのお城がお家じゃないの?どうして、秀吉さん達のところに行くの?」
「…そっか」

帰り道、幸村がふいに聞いた事
湖は、眠いのかあくびをしながら「変な幸村」と言えば、そのうちに寝入ってしまった

「「なんで?」か…いつか、決めるときが来るからな。湖」

寝入った湖の心地よい体温を感じながら、橙色に染まりつつある空に向かって言った信玄
その声に答える者はいなかった


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