第23章 大切な人に贈り物を (裏:政宗、家康、光秀、三成)
ふわりと香る花の匂い
「美しい化け猫さん、さぁ…私と遊びましょうか」
(甘い…いままで嗅いだことのない甘い香り…)
有無を言わさない言い方で、湖を畳に押し倒すのは紫の頭巾を被った男
身なりは品良く纏められ、刀が無いところを見れば武士では無さそうだ
異性に受けそうな整った顔立ち
優しげな声
普通に出会えば目をひく男ではあると思う
(知らない人…っ)
叫びそうになるが、場所が場所なのだ
そう此処は信長が部屋としている天主
「は…、はなして…っ」
片手は指を絡め畳に縫い止められるように固定され、覆い被さっている男から逃げられず、せめて身を隠そうと、必死にその身を縮めた
(っ、誰…っ、というか、なんでこんな事に…っ)
これより四半刻前…(30分前)
「仕方なかろう、やつの希望が湖との面会だ」
「ですが…あの男に、湖を会わせるのはどうかと…っ」
「…なら貴様も同席しろ」
広間で信長と家康が、先ほどから言い合いをしている
秀吉も家康に同意見だが、信長が決めた事だ
従うしかない
ため息を付きながら行く末を疑った
(まぁ…顔を合わせるくらいなら大丈夫だろう…あの男が湖を見て…いや…余計な心配はよそう…)
すっと襖が開くと三成が姿を見せた
秀吉は彼に声を掛けると、三成は首を振りながら答える
「三成、湖に伝えたか?」
「いえ…申し訳ありません。今朝は、朝から暖かいせいか鈴様しか見ておらず伝えられておりません」
「鈴はどうした?」
「少し前から散歩に出られたようで…おそらく天主の屋根かと思います」
そこに、部屋の外から声が掛かる
「御館様」
家臣の声に、信長が返事をすると
「お約束より早いですが、今井殿が参上されております。いつも通り、先にお部屋でお待ちしておられます」
「…解った」
部屋とは天主の事だ
「っ、鈴が居たら…」
家臣が下がると同時に、秀吉が慌ただしく立ち上がって掛けだした
その後を三成も追っていく
残された家康は信長を睨むように見る