第20章 私が猫で、猫が私 (裏:安土組全員)
下に組み引いた湖の肢体が反りぴくぴくと麻痺する様を、まだ明るい陽の下でじっくりと見つめる家康
心地よいあの香りは強くなっているだろう
(・・・耳が・・・無くなった・・・)
するりと髪の毛を梳けば、頭上の耳がなくなっているのに気づいた
(尻尾は・・)
尻尾はまだある
零れる蜜液に浸かり、濡れた毛の尻尾は力なく足の間に存在していた
だが、その長さは先ほどより短くなっただろうか・・・
軽く触れるだけの口づけを落とすと、愛しい女の名を呼ぶ家康
「・・・湖・・・湖」
「ん、・・・んん」
少し意識が浮上してきたのか、湖から返答と思える声が聞えてくる
「まだ、離さないよ」
(・・・家、やす・・・)
薄らと目を開ければ、日の光でよく見える彼の顔
その目は獲物を狙う獣のように、強く輝いて見えた
ぞくりと背筋を振わせれば、家康は口角を上げると甘い口づけを落とし始める
入り込んだ舌から逃げまとえど、易々と捕まり捕獲されてしまうのだ
「っ、ふ・・・っ」
ぐじゅりと、自分の足を伝う冷たさに意識が浮上する
(う、・・嘘・・・私・・・)
少しだけ視線を下に向ければ明るさで見えた自分の状態
自分が達したのだという事実に恥ずかしさがこみ上げる
「い、・・・いえ、やすっ、ま・・まって・・・」
口づけの合間をくぐり、どうにか止めさせると、真っ赤になった湖が家康を制する
「何・・・」
行為を止められた彼は不満そうに眉をひそめるが、湖は気づけなかった
恥ずかしさでそれどころではないのだ
「わ、私、っ、そのっ・・・」
自分の下で、可能な限り身を縮こませた湖
その表情は紅潮し、目には大粒の涙
彼らが身を重ねていた時に、今まで言葉だけで制される事はあっても、こんな風に泣きそうな顔に湖がなったことはない
行為を進めたい家康も、この表情には驚きわずかに湖との距離を開けた
そして、心配そうに湖の頬に手を添える
「湖・・・?」
ぐずり・・と、鼻をすする音が聞え始めれば
わけも解らぬが泣く湖を宥めようと、体制を変えざる得なくなった