第4章 眠りの森の (裏:三成、光秀、秀吉)
■秀吉 選択
「はぁ…」
「秀吉様?」
「あぁ、すまん」
湖はしばらく考えた末、秀吉を選んだ
実験道具にされた感があったのか二人を怪訝そうに見上げてから秀吉の前に座って一鳴きした
(まぁ仕方ないだろうな…だが、いつたどり着けるやら…)
三成の部屋を出て半刻(一時間)ほど…少し歩けば家臣に捕まり湯殿に近づけずにいた
湖は最初は懐でもぞもぞ動いていたが寝てしまったようで一切動かなくなった
ようやく湖の部屋につくと、女中が片付のだろう折りたたまれた着物を持ち、これ以上捕まらないようにと湯殿へ急ぐ
湯殿に着くと大きなため息が出た
懐から猫をとりだし抱き上げたが猫は、脱力したまま寝ていた
「…ほんとうに…なんて警戒心がないんだ、お前は」
(証拠なんて無いが、こいつが間者やもののけの類いでは無いことはわかる…ただの娘だ…しかもこの警戒心の無さ、どうやって今まで生きてきたのか不思議だぞ…)
「湖、起きろ」
みゃーんん…と一声あげると猫の手が秀吉の口を押さえた
柔らかい肉球が唇に当たる
「……っ!おーまーえーは…」
(そう言えば…政宗が言ってたな…寝起きが悪いと…)
湖は揺すっても起きそうもない
(そのまま部屋で寝かせれば良かったな)
「…そのまま寝ていろよ」
そう言うと着物のまま進み、桶に湯を入れると丁寧に猫を洗った
その場からは何度となくため息が聞こえていた
やがて湖の部屋に戻ると、女中が用意した褥が引かれており秀吉は、その横に座ると湖の寝衣を取りに猫に羽織らせ一息ついてから猫に口づけをした
重みはすぐに変わり、白い肌が目にはいる
長い手足はくたりと伸びたまま
チリリンとなる鈴は栗色の髪に
「う…んん」
瞳は開かず、すやすやと寝ている
「ここまで来ると才能なんじゃないかと思うぞ…」
(何処でも熟睡できる…まるでこどもだ)
褥に下ろそうとしたが、見えていなかった反対の手が秀吉の着物をしっかりとつかんで離さない
離そうとすると、湖の胸元が目に入り思わず視界を反らす
しかも秀吉の胡座の中に収まっていた湖の感触が段々と鮮明になってくる
「…勘弁してくれ」
秀吉の呟きに、湖はお構いなしに寝続けた