第18章 秘密の抜け道(裏:謙信、信長)
■謙信 選択
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※注意事項※
P387にさかのぼって頂きます
佐助、信玄、幸村が去った後・・・知らせが入るまでの別バージョンです
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【対価】
「春日山城へ来る気は無いか」
ドキリと、跳ねる心臓
このまま身体を飛び出して言ってしまうんじゃないか、この心音が謙信に聞えているでは無いか・・・そう考えてしまう湖の額に柔らかい物が触れる
「え・・・」
目を向ければ、ごく間近に謙信の顔
「別に、側室になれとは言わん・・・その身を我が城に置かぬかと聞いて居る」
(そくしつ・・・春日山城・・・謙信さまの・・・?)
眉間に皺が寄る
涙目で顔を染める湖
口は一文字のように閉じ、その表情の答えは何か
ぼたぼたと、次から次へとあふれ出てくる涙
「あ・・え・・・なんで・・・」
湖も何で涙が出てくるのか解らなかった
「・・・泣くほど嫌か」
「あッ・・ちが・・」
言葉に詰まりながらも、否定とみられる行動
首を振る湖
「なぜ泣く」
「っ・・・わか、りません・・・」
顔を両手で覆う湖の頬に手を添え、自分と目が合うように仕向けた謙信
泣き顔を覆おう手
それを反対の手で優しく避け、その表情を見た
色素の薄い瞳から零れる涙、頬は紅色に染まり、自分を見つめる視線は熱い
零れる涙をすくうように口づけを落とせば、湖は下ろされた両手で謙信の着物を掴み「ん・・・」と小さく反応を見せる
「春日山城での一時・・・」
ぴくりと身を揺らし、目を閉じる湖
そのまぶたの上に口づけを落とす
「・・・忘れたわけではないだろう」
唇を避けるように、額や耳、まぶたに柔らかな感触を落としていく謙信
湖は、その謙信の着物をぎゅうと握り与えられるものを受け止めている
(・・・忘れない・・・記憶を無くして過ごしたあの時間。春日山城での日々も、そこにたどり着くまでも、そして、謙信さま達と分かれた時も・・・)
謙信に触れられる度に、積もる愛情
普段の温度を感じない瞳とは打って変わったような、熱を感じるその瞳
自分にやさしく触れる手
「湖・・・」