第4章 眠りの森の (裏:三成、光秀、秀吉)
■三成 選択
『移動の間、狭いでしょうが…ここに入ってくださいね』
猫を懐にいれ、まずは湖の部屋に着物を取りに行き、その後湯殿へと向かった
(湖様?…眠られたのでしょうか…ずいぶん静かですね)
そんな事を思いつつも、懐の温もりに頬が緩んでいた
「湖様、着きましたよ」
懐から猫を取り出すが、くたりとして動かない
「…湖様!何処か……あ…」
慌てた口調がすぐに途切れ
猫をそっと置くと、懐から懐紙を出す
「忘れていました…またたびの残り香があったかもしれません」
今朝、懐紙に挟みまたたびの枝を持ち歩いていたことを思い出した
湖を見ると今朝程ではないが、いい感じにほろ酔いの様子
「…重ね重ね申し訳ありません、湖様」
三成は猫を抱き上げ、そのまま湯に近づくと桶に湯をくみ、猫を入れてやった
「着いた香りを落としますね」
丁寧に慎重に猫を洗い拭いてやる
「…湖様もですが、鈴様も素敵な香りがしますね」
(…湖様が花なら、鈴様は…草原のような香り…湖様の意識がなく…良かったかもしれません…)
口に手を当てて猫から目をそらす
昨日会ったばかりの娘の肌を、もう何度見たか…
可愛らしい娘とは思っていたが、間近で肌を見てしまい、唇の感触や娘から漂う花の香りを知ってしまうと、どうしても意識してしまう
しばらくそのまま考えていたが、このままでは風邪を引かせてしまうかも知れないと意を決し
猫を湖の着物でくるむと、そっと口づけを落とした
フワリと、花の香りが鼻をかすめると共に湖の姿に
「…湖様」
その名を呼ぶと、湖はうっすらと目を開けた
「ん…」
そして首を少し傾けると、そのまま三成に口づけをしてきた
「!?」
ちゅ…ちゅく…
まるで猫が餌を舐めるように、三成の唇を甘く舐める
「…っ、湖様っ」
ぐいっと湖の肩を押すと距離を取る
「一体どうされたのです…」
三成は鼓動が跳ねるのを感じつつ、湖の様子を伺うと
真っ赤になって潤んだ瞳で息荒げに呼び返される
「…みつなり…くん」
その様子は酔っているようにも見えるし、酔いとは違う乱れ