第14章 化け猫と私【後日談】 (表:信長・秀吉 裏:他四名)
城へと引き返す最中
湖は、時折しゃっくりを上げながらも黙って信長の乗る馬に乗っていた
信長も、他の武将も黙って城へと引き返していたが
やがてしゃっくりも聞えなくなると、秀吉が様子を伺うように湖をのぞき見た
「寝たか」
「寝ました」
信長に体重を掛けるように寄りかかった湖の頬には擦り傷が見える
「無茶しやがって・・・」
秀吉がそう呟くと、政宗が長い息を吐いた
「怪我させないように、閉じ込めたはずなんだが・・・」
「私が伝言のあった場所に着いた際には、もうもぬけの殻でしたよ」
「・・・政宗さん、どうやって湖を閉じ込めたんですか?」
三成の答えに、家康が質問を返した
「鈴の首に紐をつけた・・・あ?こいつ・・・どうやって、元に戻ったんだ・・・」
政宗の言葉に信長以外の全員が見合わせたが、誰も心当たりがない
「湖が起きたら聞けば良い」
「湖しか知らないことが多い一件だったからな・・・」
光秀が、含み笑いをしながらそう言うと、家康が眉をしかめ
「それより、まずは湖の傷の具合を確認しないと・・・光秀さん、あんた・・・側に居てどうして止めなかったんですか?」
「あの煙管とか呼ばれた透き通る男が側に居たんだ。何が起こっているのか、あれが何なのかも確認出来ずに動けるか・・・」
「・・・まさか、あの団子屋の主人や猫が物の怪だったとな・・・」
政宗が天を仰ぎ、おかしそうに笑っていた
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そうして、城に戻った一同は信長の天主へと集まった
「湖まで連れてくる必要があったのですか?」
「秀吉・・・このまま湖を1人に寝かせて置けるのか」
改めて、信長が下ろした湖を見れば
着物は膝上から黒ずみ、頬は擦り腫れ、着物の袖口が破れ
どんな無茶をしたのか起こして問いただしたくなる
「・・・さっきは、暗闇でよく見えなかったが・・・この黒ずみ・・・全部血か・・・」
秀吉は、湖の着物に手を伸ばし触れるか触れないか程のところでそう言った