第10章 敵陣の姫 第三章(裏:謙信)
「どうした・・・」
謙信が湖を連れてきて二ヶ月ほど
すっかり城内のものにも慣れ親しんだ湖は、兼続を始め数名の者から側室に置いては・・・等、話が上がるほどだった
「最近、夢を見るんです」
湖が話した夢の内容に、謙信は眉を上げた
誰かが、「迎えに来た」と言って来るのだと
懐かしい声がたくさん聞えたと・・・
「あ・・・今日は、幸村と城下に行く約束をしたんです。行ってきてもいいですか?」
「・・・あぁ」
そう言って、湖は部屋を出て行こうとする
「湖・・・」
「は・・・っ」
立ち上がった湖の腕を取ると、自分の方へ引き寄せる
そして、その身体を腕の中に納めると、首筋に顔を寄せる
「けっ、けんし・・・んさまっ?!」
急な抱擁に、驚きを隠せず硬直した湖の耳は真っ赤になっていた
「なんでもない・・・気をつけていけ」
そうゆうと、腕を解き湖を見る
湖は、その表情に心臓が跳ねた
「っ・・・はい・・・」
こくりと頷くと、湖は部屋を出て行った
残った謙信は、杯に手を伸ばし・・・だが、わずかもしない間に伸ばした手を止めた
「・・・佐助」
「はい」
どこから現れたか、佐助が謙信の側に控える
「どうなっている」
「確認できているのは、石田三成と明智光秀の斥候・・・すでに、本人達が越後に入った事は口を割っていますが、他の情報はありません」