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【イケメン戦国】私と猫と

第9章 敵陣の姫 第二章(裏:謙信)


「わぁ、山きれい・・・!」

湖は、こどものようにはしゃぐ
宿場を出て春日山城までゆっくりと二日掛けて移動
急げば、丸一日で着くが湖の体調を考えゆっくりと移動することになった
だが、当の湖は宿場を出てから熱を上げることもなく元気にはしゃぐ
ほとんどの傷は、着物の下にあり、目立っているのは額の当て布と右手手首の当て布くらい
それ以外は、端から見たら元気な少女のようだった
記憶は混乱したままのようで、織田陣の話は出てこない

「湖さんの居た所より、雄大な景色は多いかも知れないな」

佐助がそう言えば、湖は「そうなの?」と小首を傾げながら笑った
馬での移動の途中、茶屋を見つけ立ち寄った五人は、それぞれ茶や菓子を注文し腰掛けていた
茶屋の目の前には、悠然と立つ山とその麓の湖
茶屋の席から、少し斜面を降りればその湖を覗ける

「謙信さま、私行ってきてもいいですか?」
「・・・好きにしろ」

隣に座っていた謙信に断ると、湖は斜面を駆けていった

「湖さん・・・記憶が戻りませんね・・・」
「だなぁ。安土の話がちっとも出てこない所を見れば、そうなんだろうな・・・」

佐助の言葉に信玄が答えた

「まぁ、その方がいいんじゃないんですか?思い出せば、帰ろうとするだろうし・・・」

幸村が、団子を食べつつ湖をのぞき込んだ湖を見ながら言った

「・・・湖?」

四人が、湖の様子を見ているとおかしな事をしていることに気づいた
湖をのぞき込んだ湖は、その水に手を差し入れたり、横を向き自分の脇を見たりを繰り返す

「なんだ・・・?」

不審な顔をした謙信の前を信玄が横切り斜面を降りていった

「湖、何してるんだ?」
「あ。信玄さま・・・あの・・・えっと・・・この子・・・」

湖は湖を指さす
すると、湖に写った湖の横にちょこんと座ってあくびをする煤色の猫が居た
信玄は、一瞬驚き湖の横を見るが其処に猫は見当たらない
その内、佐助も降りて来た

「・・・鈴」
「鈴?・・・この子、鈴っていうの?佐助くん」
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