第8章 敵陣の姫 (裏:謙信)
それだけで、湖は驚いて目を見開いた
謙信は、そんな湖を見てニヤリと笑うと今度は唇に口づけを落とす
掠めるように目を開いたまま
湖の瞳に自分が映っている
それが、なぜか満足だった
湖が気づき、じゃばんと湯船が音を立て、湖が身を引こうとすれば、後頭部を軽く支えそれを自分の方へ引いてくる
そして、今度は先ほどと違って深く
少し開いた唇の隙間から舌をねじ込み、逃げる湖の舌を絡め取る
「あ・・・、ふぅ・・・っ!」
謙信の胸板を両手で押すように力を掛けるが、びくりともしない
後頭部を支える手、湖が落ちないように体を支えるよう腰に添えられた手は、どちらも無理に押さえつけずに支える程度の力だ
始め、湖は抵抗し頭を振ったり手を突っ張ろうとしたが、すぐにその抵抗は収まる
舌を抜き取り、湖から離れればお互いの唇を唾液の線がはしる
「・・・気持ちよかったか?」
「っ・・・」
息が上がったままの湖であったが、謙信の言葉にビクリと反応し彼を睨んだ
「くちづけはっ、恋人同士がするものですっ!」
真っ赤な顔で、怒る湖
「こいびと?・・・なんだそれは?」
「お互い好き合った人たちの事ですっ!」
「・・・なら、湖・・・俺のものになれ」
「へ・・・?」
「・・・俺は今すぐにでも、お前を自分のものにしたい」
再度口づけを落としていく
「っ!!・・・はぁ・・・あ・・」
(だめだめっ!流されないっ!私には・・・私には?)
湖の様子が変わり、謙信は顔を離すと湖を見た
自分が与えている刺激に反応せず、何かを考えている顔
(・・・気に入らない・・・)
湖はけが人、手を出したとしても体に負担が掛かりそうな事はしないと決めていた
だが、今のように自分を見ずに他の事を考えている湖は気にくわない
後頭部を支えていた手を下ろし、その手で湖の姿勢を変える
自分と向かい合うように
「え、あ・・・いやっ!」
小さな悲鳴とともに、また自分が湖の瞳に映る
「何を考えていた・・・」
そのまま、胸を弄る
「やぁ・・・謙信さま・・っ」