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【イケメン戦国】私と猫と

第8章 敵陣の姫 (裏:謙信)


佐助が考えていたのは、また別のこと
湖は、織田の人間ということになっている
敵方の人間をこの時代の人たちが、どう扱うか良く理解している
たとえ、謙信の加護があったとしたとしても、それをよく思わない者もいるだろう
湖は守らなきゃいけない
そう考えていた

大名はその日の内に湖の着物を用意し、薬や持ちやすい応急処置道具やら多々旅支度をしてくれた
「ご迷惑おかけしています・・・私、長い間お世話になったようで・・・色々、ありがとうございました」

褥に正座で姿勢を正した湖は、彼に深々とお辞儀をする

「っいえいえ、姫様はお気になさらず。元気になられて良かったでよ」

また大名も妙に背筋を伸ばし、湖にお辞儀をする

「・・・湖、明日には此処を出る・・・何か、必要な物はあるか?」

謙信は大名の横にゆるりと座って湖に尋ねた
すると、湖は遠慮がちに大名に尋ねる

「・・・あの・・・では、もし良ければ湯殿を借りてもいいでしょうか?」
「もちろん、用意しておりますよ。長く寝込んでられたのです。汗もかいていますでしょう」

気の利く彼は、湯殿の用意も、久々に喉を通す食事の用意もしっかり済ませてくれていた

「ありがとうございます」

湖は、大名に微笑み礼をした
そんな様子を見ていた謙信は、湖の顔に手を伸ばす

「・・・謙信、さま?」

きょとんとした表情で、謙信を見れば彼はそのまま湖を引き抱き上げた

「・・・かなり痩せたな・・・以前にも増して軽い」
「そ、それは、私が五日も寝ていたせいでしょう。すぐに戻りますから」

急に横抱きにされ、驚いたのは湖と大名

「湯殿、使うぞ」
「・・・は、はい」

謙信はそのまま立ち上がり、湯殿の方向へ歩き出す
残されたのは、襖開けっ放しの部屋にいる大名だ

「・・・ほぅ、謙信様がな・・・これは、報告しておくべきかな?」

にこにこと短な白髭を撫で、丁寧に襖を閉めると、足軽く自室へと向かった
今、春日山城を納めている謙信の養子、景勝と彼を支える直江兼続
大名は、自室に戻るとすぐに筆を取り直江兼続への書を綴った
――謙信様に、意中の姫君あり

兼続が、書面を受け取るのは謙信が春日山城へ到着する前日になった
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