第7章 視察 (裏:謙信、政宗、家康)
■家康編
城に戻った私たちを見て、秀吉が開口一番
「湖、お前また…何をしでかした」
心配した表情を見せたと思ったら、すぐにご指導が入る
「秀吉、今回は湖に助けられた…そう怒るな」
湖を抱いたまま信長が馬を下りる
そのまま歩こうとすると、同じく馬を下りた家康が声を掛けた
「信長様…湖は湯殿へ連れて行ってください」
(湯殿?)
湖は不思議そうに家康を見れば、ため息を漏らし続けて話した
「鈴を上杉から受け取った際、鈴に血が付いていたので…念のため」
「…だから貴様の香りに血の匂いが混じっていたのか」
信長は、抱いていた湖を見るとそのまま家康に渡した
「ついでに怪我が増えてないか、確認しておけ…」
「は…」
「え…??」
家康に荷物の受け渡しのように渡された湖は、きょとんと呆けている
家康は特に何も言わずに湯殿へ足を進めだした
「え…家康?あの…」
「黙ってって…下ろしてもいいけど、どうする?」
下ろすと言われても、湖は政宗の羽織を巻かれているだけで裸だ
下ろされれば、妙な格好で歩くことになる
もちろん、今でも妙な格好と言えばそうだが…
「いい、いいえ、このままでいいです!」
「なら、黙ってって」
ぴしゃりと、そう言えば湯殿へ人気の無い通路を選んで進んでいく
(家康…もしかして、あんまり人に見られないようにって、気にしてくれてる?)
その通路を通る間、湖はそう考えていた
結局、湯殿へ来るまでには他の人に会わずに来ることができた
そして、家康は湖を置いた後、着物を持ってくると言いすぐに出て行ったのだ
残された湖は、包まっていた羽織を肩から下ろすと髪飾りも外した
ちりり…と小さく音を立てる飾りを見れば…
(確かに、髪飾りに少し血が付いている…一緒に洗ってしまわないと…)
手に持った髪飾りが音を鳴らす
それを持って湯殿へ入り、湖は髪や腰部分に付いた血液を落としていった
(…謙信さま…大丈夫かな…今度会ったら、お礼をしないと…)
髪飾りも洗い、湯に浸かると思い出すのは、やはり謙信の事だ
自分を庇って怪我をさせてしまったのだから