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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


「さようでございますね、そろそろ終いにしようと思っていたところでございます」

兼続がそう言えば、湖は「じゃあ」と後ろに隠し持っていた皿を喜之介の机に置いた

「きぃのすけ、一緒に食べよー」

そこにあったのは、九つの笑みと同じもの

「…は??」
「湖様…」

喜之介は、まんじゅうが三つ乗った皿を見て固まり
兼続はじとっと湖を見る

「だって、一個食べたらもうお腹いっぱいなんだもの。美味しいけど、こんなに食べられないもん」
「湖様、これらは湖様の…なんと言いますか…体調を整える為に・・」
「体調って、菓子じゃないですか?!こいつ、どこが悪いん・・っ」

スパンっ!

喜之介の頭を見えないほどの早さで叩いたのは兼続だ

「あ…」
(いたそー…)

叩いたものは先ほどの本二冊分
結構な重さもあっただろう
頭に両手を乗せる喜之介は、少し涙目だ

「喜之介、湖様が許してもいくら何でも「こいつ」呼ばわりは許されないぞ」
「…っはい、も、申し訳ありません」

喜之介が誤っていると、喜之介の手に重なるように湖の手が乗った

「喜之介、大丈夫?痛い??」

おどおどと喜之介の頭を撫でているが、喜之介はぴたりと止まってしまうのだ
重ねられた手は、指先の細い女の手だ
自分の手と、その下にある髪の毛が撫でられ喜之介は無意識に…

「あれ…?そんなに痛かったの??」

耳が真っ赤になっている様子に気付いた湖は、心配そうに喜之介の顔をのぞき込もうとする
長い髪が肩から滑り落ち、さらりと畳につくと湖の身体が沈んでくるのが解る
慌てた喜之介は、おそらくそこであろうと狙いを定めたように、湖の頭を押し顔を背けたのだ

「い、痛くねーって…っ」
(っーか、触るなっ!覗くなっ!…な、なんだこれ?!)

自分の体温が一気に上がるのを感じた喜之介はその顔を見せないようにする
だが、反対方向にいた兼続にはその表情を見られているのだ

「そっか、なら良かった。私ね、細すぎるんだって。太らないと、馬にも乗っちゃ駄目だって皆が言ってて、だからお菓子いっぱいくれるの」
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