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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


夕餉の時刻になり
この場に集まる顔が一人足りない事に気付くと、湖は不安そうな表情を見せた

「兄さまは?」
「佐助は、安土への連絡を持って出た。明日か明後日には戻るはずだ…んな顔するな」

登竜桜からの文が届いて早々、佐助は安土へ出向いた
この半月、安土の面々が現われないところを見れば、裳着に合わせて全員で来るつもりなのだろう
知らせずに長い間近くに居られるくらいならば、即時知らせておいた方が良いと判断されたのだ

ポン、ぐりぐりと頭を撫でる幸村に「なんの連絡?」と湖はその手を止めながら聞く

「お前達が土地神のところに行く日取りについてだろうが…だから、んな顔するなって」

垂れ下がった眉尻に指をあてぐりぐり押してやれば、湖は

「痛いよっ、幸、らんぼうっ!」

と、言いその手をどかした

「湖、こっちにおいで」
「はーい、ととさま」

謙信、幸村、兼続と並び、向かい合って信玄、湖、白粉と座る
そこに御膳が運ばれてきたのだが

「湖様、皆同様にしてみましたが…食べられそうでしょうか?」

兼続が少し心配そうに聞く
九つの時の食事はかなり少なかった
よって小鉢に少量ずつと皆とは違った食事を取っていた
「うーん」と自分のお腹に手を当てながら考えた後、湖は頷いた

「うん。少し多いけど、たぶん食べられる!」

だが、皆が食べ終わる頃には…

「湖―、もうちょい食べろ」
「ととさま、もーむりー」
「せめて米だけ食べたらどうだ?」
「もうお腹破裂しそうだよ、かかさま」

お膳の半分もいかない内に「ごちそうさまでした」と手を合わせるのだ

「夕餉の前に菓子でも食ったのかよ?」
「食べてないよー、本当にもう入らないの。幸、お腹触ってよ。パンパンなんだよっ」

苦しそうに後ろに手をつく湖は、本当に目一杯食べたのだろうと伺える

「…兼続、食事を元に戻せ」
「はっ、かしこまりました」

元にとは、以前同様小鉢で少量を多種という意味だ
お膳を下げられれば、謙信は湖を手招きする
気付いた湖は、「なんですか?」と四つん這いで這っている
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