第27章 桜の咲く頃 ひとやすみ(初恋の巻)
「あれ…?謙信さま?」
「…なんだ?」
「えっと…お時間…早くない?」
兼続が去ってからどのくらいたっただろうか?
だが、半刻はたっていないのは確かだ
「…時間だと?」
湖の言葉に目を細めるも何のことやら謙信には解らない
信玄が苦笑しながらそんな謙信に声を掛けた
「兼続がな。謙信には客が来ているから半刻待つようにと言いに来たんだが…そのぶんだと客人は帰ったようだな」
「…なにやら知らぬが、帰って行った…湖、今日もそれで行くのか?」
それというのは、着物の事だと解る
「あ…だめ?これ、お気に入りなの」
「いや。駄目ではないが…そうか…越後縮みが気に入ったか…」
(いや。謙信…そうではなく、お前が選んだ着物だからなんだがな…この男も軍事や政には長けているが…こっち方面は弱そうだな…)
信玄は「おいおい」と言った様子だが、湖の笑みを見ていればまあ良しと何も言わずにいた
「行くぞ。湖」
「はいっ」
部屋から出で行く謙信を追う湖
信玄と白粉が同じく部屋からでてその後ろ姿を追っていれば…
嬉しそうに謙信の袖口を持った湖がいた
「おーおー、なかなか甘々だな」
「…そうなのか?」
まだ二人の目が届くうちだった
謙信が、湖の手を袖口から退けると、その手を引いて歩き出したのだ
「お…」
それに、湖が何かを言えば謙信も答えたのだろう
湖は、コクコクと頭を振った
見えなくても解る
その顔が真っ赤になっているであろうことは
「謙信の奴…わかってるんだか、わかってないんだかな…」
「信玄…湖は、大丈夫か?あれは、熱があるんじゃ無いのか?」
「……白粉、お前のそれは本気なのか?」
「なにがだ…?」
穏やかな昼の一時のことだった
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手繋ぎデートの一幕でした
九つの湖と、謙信様です
このあと、仕立屋に行きどんな反物を選んだのか…
個人的に、湖には大人になっても兵児帯のようなひらひら金魚の尻尾みたいなのを腰につけていて欲しいなぁ…なんて思う
「楽だから、これがいい!」みたいな(笑)