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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


(いや、悪いものではないのは確かだろうが…)

謙信は特に何も考えていないのだろう
差し込まれた指に舌が這えば

「起きたな?」と、面白そうに謙信の口角を上げるのだ
それは、信玄から見てても解る

ぴちゃんと、水音と共に指が外れれば
湖は自ずと目を開ける

「甘い…桜さまのおいしいの・・あ、・・れ…??」

目の前には謙信と、信玄

「おはよー、謙信さま?私、昨日ととさまと…あれ?ととさまのお部屋だよね?」

湖から手を離せば、信玄の部屋に置いてある着物を持ってくる謙信
そんな謙信を目で追いながら、湖は「さっきの甘いのなに?」と尋ねた

「さあな。お前が朝起きられるようになったら褒美でやろう」

謙信は片手で器用に壺の蓋を閉め、湖から見えない位置に置いた

「桜さまの美味しいのと似てる味…私、あれ好きだよ!謙信さま」

(桜の美味しいの?)

「何の話だ?」
「あのね、湖。赤ちゃんの時、桜さまの美味しいの飲んで大きくなったの!それと同じ味するっ」
「樹液だと言っていた。似たものを見つけたからな」
「謙信さま、桜様の飲んだの?いつ?」
「……」
「ととさまも飲んだことある?すごく甘くて美味しいのっ」

すっかり目を覚ました湖
くるまっていた羽織から着物へと着替えようし始めた

(隠れて着替えられればいいんだが…まぁ、すぐに着物に着替えるようになっただけ進歩か…)

そう信玄はため息をつきながらちらりと横目で湖を見ていれば

はたと動きを止め、脱ごうとしていた羽織でもう一度身をくるんだ

「あっちで着替えてくる」
「ん…?あぁ」
(なんだ…?)

着替えをもって立とうとする湖
だが謙信はそれを止めた

はしっと音をたてて捕まれた手首

湖はあからさまに動揺を見せた

「湖」
「……」
「謙信?」

信玄はその捕まれた手と謙信を見て眉を潜める

「見せてみろ…」

ビクッ

背が揺れる

「謙信…どうした?」
「…足だ」

そう言われれば、湖は左太腿を押さえるのだ

(そこは……佐助が触れてた)

思い出すのは数日前、喜之助に蹴られたという場所
その時に怪我のあとを確認しなかったこと、
湖が普通に歩いていることで記憶は薄れていたが
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