第4章 虫の王
扉を開けて廊下に出ると、オルガが私に気付いて駆け寄って来た。私の事を心配して待ってくれていたのかもしれない。
「様…」
気遣うように声を掛けてきたオルガに、私は口元を引き上げた。
「オルガ…私、疲れちゃった」
笑って見せた私に、オルガは申し訳ございません、と謝った。オルガが謝る必要なんて無いよ。きっと私が悪いんだもの。
私は頭を左右に振った。
「オルガ、休みたい…」
「はい、お部屋に戻りましょう」
オルガが私の背中に手を伸ばしかけて、一瞬戸惑った。それでもその手を私の背中へと添えると、優しく促して歩き出した。
今はその優しさすら、悲しく感じてしまった。
私は部屋につくとベッドに倒れ込んでそのまま眠りに落ちた。昨夜が余り眠れなかったせいか、私はお昼前まで深く眠った。
オルガが用意してくれた昼食を頂く。けれど、何だか気分が優れないせいか食事が進まず、申し訳ないのだけれど少し残してしまった。
昼食を終えてぼーっと窓の外を眺める。とても良いお天気で、見えるお庭のお花もキラキラと輝いている。それとは対照的に私の気分は落ち込んだまま。
「様、今日はお出かけになられないのですか?」
「うん…」
私はきっとキリヤ様の目の届かない所に居た方が良いんだ。キリヤ様のお邪魔にならないように、大人しく静かに隠れていた方が良い。
「今日は運動はされないのですか?ほら、その…昨日はブルマーと言う物を用意しましたが、今日はジャージと言う物を用意致しましたので」
オルガの手には何処から手に入れたのか、薄いピンク色の可愛らしいジャージが上下揃って用意されていた。私はオルガの気遣いが有難かったけれど、やっぱり外に出る気にはならなくて頭を左右に振った。
「そう、ですか…そうですね、疲れが溜まっているのかもしれませんし今日はゆっくりお休みになって下さい」
「うん…有難うオルガ」
私は今日一日、部屋から出る事は無く借りて来た本を読んで過ごした。食欲はどんどん無くなっている。
そして次の日も私は部屋から出ないで大人しく過ごして、その次の日。
朝目が覚めて、今日も一日部屋で大人しくしていようと思っていたその時だった。
「お待ち下さい!」
オルガの声が聞えて、私は身構えた。
扉が乱暴に開けられる。そこには怒っているキリヤ様が立っていた。