第4章 虫の王
「王妃様、見つけましたぞ」
男が私の首元に顔を埋める。そして大きく息を吸い込むと、うっとりとした表情を浮かべた。
「あぁ、この匂いでございます。臭い臭いにおいです」
私は男の言葉に体を強ばらせた。その間にも男は鼻先を首元へと押しつけたままスーハーと何度も深呼吸を繰り返す。
「キリヤ様は王妃様の香りがお嫌いですからなぁ、王妃様の事もお嫌いなのでしょう」
そう言われて体が震えた。私がキリヤ様に嫌われてるって考えない様にしてた。でも人から言われて、改めてそうなのかもしれないと嫌な想像をしてしまう。
「それに、この…このっ」
「っ、やぁ…」
男の手が乳房を両手で掴んで持ち上げた。そして揺らしてその感触を確かめる。私は男の手を止めようと抵抗したのだけれど、力では敵わない。
タプタプと揺らされて悔しさに唇を噛んだ。
「柔らかな…いけませんなぁ」
興奮した男が私のスカートを引っ張りあげようとしているのに気付いて慌ててスカートを掴んだ。
「止めて!止めて下さい!」
「大丈夫です。私が綺麗にして差し上げますから」
スカートを上げようとする男の力と下げようと抵抗する私。その力に耐えられずにスカートについていたレースが破れてしまった。
「キリヤ様も私に賛同しておられます。何と言ってもキリヤ様は王妃様がお嫌いなのですから」
「っ!」
これもキリヤ様が命じた事なの?でもキリヤ様がそんな事…頭では違うと考えながらも、昨日のキリヤ様の態度を思い出すと完全に否定も出来なくて。私が戸惑っていると、その隙に男がスカートを捲り上げた。
頬を上気させた男が私の下半身をじっと見詰める。そしてクンクンと鼻を鳴らしてニヤリと笑った。
「大丈夫です、綺麗にすればきっとキリヤ様にも好いて貰えますから」
私にお任せ下さい、と男は口にすると唾液を飲み込み喉を上下させた。男の視線がずっと私の下部から離れず、その異様な様子が怖くて心臓が早鐘を打つ。
「大丈夫です、大丈夫ですから」
男はブツブツと呟きながらゆっくりと屈んだ。そして顔を私の下部へと近付けてくる。私は必死で男の頭を押して抵抗した。
「やぁ!やっ…助けて!」
その時、書庫の扉をノックする音がした。男の動きが止まる。
「様?」
「オルガ!」
私は男の手が緩んだのを見計らい、扉へと駆けた。