第4章 虫の王
お風呂を終えて着替えた後、朝食を頂いた。お野菜が新鮮でとても美味しい。それに運動の後だからか、キリヤ様に会えたからか何時もより朝食を美味しく感じた。
お腹がいっぱいになって、今日はどうしようかと迷っていたらオルガが私に本を差し出した。
「様は本はお好きですか?」
「ええ、大好きよ」
受け取った本のページを捲ってみる。繊細な絵が描かれた本は私の初めて見る花が沢山載っている植物図鑑だった。
「虫の国の字が読めるのですか?」
「うん、少しだけれど習ったの」
ページを捲ると、チリの花を見付けた。その絵を指先でなぞってみる。
「では城の書庫をご覧になられますか?実はこの世界に出回っている本は虫の国で書かれた物が大半なんですよ」
「そうなの?!」
虫人は頭が良く勤勉な者も多い為、作家や学者などが多いらしい。そんな国の書庫だからきっと見事なものに違いない。私は目を輝かせた。
「では、ご案内しましょうか」
オルガが待ちきれない私の様子を見て小さく笑った。
「凄い!」
扉を開けると、本、本、見渡す限り本だった。二階、三階までも本で埋め尽くされている。
「気に入らなければ、違う部屋をご案内します」
こんな部屋が何個も有るらしい。これを全部読むのはどれくらいの時間ががかるんだろう。思わず口を開けたままに見上げていると、オルガの小さな笑い声が聞こえた。
「本当に、様は可愛らしい」
「えっ?!あ、有難う?」
言われた言葉に頬が熱くなった。私はそんな自分を誤魔化すように、足早に書庫の奥へと進んだ。そして気にしていませんよ、とばかりに適当に一冊本を手にして捲ってみる。
「では、私はお茶を持って参りますね」
「う、うん、宜しくお願いします」
オルガが部屋から出ていって、ホッと息を吐き出した。適当に手に取った本はこの異世界の事について書かれていた。
そこで目に付いたのは蜥蜴の外見をした生き物の絵だった。獣人のラウルフ様と同じ様に、蜥蜴が人間の様に二本足で立っている絵。
「蜥蜴との、戦争…?」
文字が難しい。それでも私は気になって次のページを捲ろうとして、突然の衝撃に本を落とした。
「っ?!」
私は近くの本棚に押し付けられた。何が起こったのか分からず何とか首だけ振り返ると、そこには昨夜私に絡んでいた蜘蛛の虫人がいた。