第4章 虫の王
朝起きたら、服は何時の間にか寝巻きに着替えていた。オルガがしてくれたのだろう。私はベッドから抜け出て窓の側で伸びをした。今日はいいお天気。夢の中でお爺さんとお婆さんに会えたからか、少し元気が出た様な気がする。
「んー…っ、良し!頑張るぞっ!」
呟いた時にノックの音がした。
「様、オルガです」
「はい、どうぞ」
私の声にオルガが扉を開けた。心配そうにこちらへ視線を向けてきたオルガが、私の様子を見て安堵の表情を浮かべる。きっと私の事を心配してくれてたんだ。
「様、おはようございます」
「おはようオルガ。その…昨日は、心配してくれたのにごめんなさい」
頭を下げると、オルガが用意してくれた服を手に近付いてきた。
「私は、何があっても様の味方です」
「オルガ…」
この国で私を支えてくれる存在が一人でも居てくれる事が嬉しかった。大丈夫、私は頑張れる。私は大きく頷くとオルガに笑って見せた。
「有難う!私、頑張るよオルガ!」
その調子です、と小さく口を引き上げるオルガに心が暖かくなった。
「オルガ、私食事前に運動をしたいのだけれど…」
「あぁ、ではちょうど良かったですね。昨日言ってらしたので、運動をしやすい服を用意しておきました」
オルガはなかなかに出来る人、いや虫人みたい。私は差し出された運動用の服を受け取ってお礼を言った。
「あ、あの、オルガ…これって…」
剥き出しの足が恥ずかしい。そして心無しか、上の服もやけにピッタリしている気がする。
「ええ、人間界ではこの様な服装で運動をするのでしょう?…変わっておりますね」
確かに運動をする為に使う服だけれど、こ、これは…
「ブルマーと体操着…」
しかもぴっちり目のそれは、何処か夜のお仕事をするお姉さんがコスプレで使う様な体のラインがしっかりと出る、そんなサイズのものだった。胸元が張ってて窮屈な感じがする。しかも赤い鉢巻き付き。
オルガ、出来るならジャージとかそっちの方が良かったよ…などとはせっかく用意してもらったのに言えない。
「あ、有難うオルガ…私、がんば、る?」
ちょっぴり頑張れないかもしれないと思ってしまった挫けそうな心に、私は鉢巻を頭に巻く事で気合を入れ直したのだった。