第4章 虫の王
虫人達はお酒も入って、楽しそうに盛り上がっている。私だけ離れた所でそれを眺めていた。私ってここに居る意味が無いんじゃないかなぁ。
ご飯を食べ終わって結構時間が経ったと思う。私はどうすれば良いのか分からなくて、抱えた膝の上に頬をついて眠気に目を閉じた。
慣れない環境と緊張に疲れていたのか、眠くて微睡んでいたところに座っていたクッションが揺れて驚いて目を開けた。目に映ったのは、蜘蛛だろうか黄色と黒の派手な縞模様の虫人の男の人でその一人が私の直ぐ隣に腰掛けていた。
私は慌てて後ろに下がろうとしたのだけれど、クッションで滑ってしまい仰向けに倒れてしまった。
「王妃様、王妃様の匂い…」
虫人の男の人が私に顔を近付けて鼻を鳴らす。大きく吸った男の人は目を細めて顔が赤くなっていた。お酒の臭いがする。この人きっと酔ってる。
私は逃げようと体を反転させた。俯せになって、這って逃げようとしたのだけれど、背中を押さえ込まれてしまった。男の人の体重がかかって苦しい。
「んー…やっぱり匂いますな」
首元に鼻を押し付けられてクンクンと嗅がれると、その感触にゾワゾワと背筋が震える。
「一体何処から匂うのか…」
「やぁ、止めて下さい!」
男の手が私の体を這い回る。腕を掴んで肩、首元、背中から腰、そしてお尻を鷲掴みにするとその手触りを確かめる様に何度も揉まれた。背後で男が笑う気配がする。
「この感触は…堪りませんなぁ」
男の熱い息が首元にぶつかる。気持ちが悪い。男を押しのけようと体を捻ると、首元に男が顔を埋めてきた。
「ひぃっ」
べロリと舐められてその気持ち悪さに声を上げた。私は必死で男の肩を掴んで押しやる。それでも男はその抵抗すら面白いみたいで楽しそうに笑っている。
「止めて!止めて下さい!」
私は男を押しのけながらキリヤ様の方を見た。男の肩越しにキリヤ様と目が合った。
「キリ…っ」
私はキリヤ様に助けを求めようと口を開きかけた。けれどキリヤ様は興味が無いとばかりに私から顔を逸らしたのだ。私はそれを目にして何も言えなくなってしまった。
「これはまた…」
男が私の胸を乱暴に揉んでくる。その合い間にも鼻を押し当てて臭いを嗅いでいる。それが段々と下に下がって行って、私のお臍から下腹部へと移動した。
やだ、このままだと…
私はこの先の事を想像して青くなると激しく暴れた。