第4章 虫の王
すっかり大人しくなった私を、オルガは甲斐甲斐しく世話してくれた。申し訳無かったのだけれど、何だか疲れてしまって。優しくしてくれるオルガの存在が心地好くて、何もする気が起きなかった。
「オルガ、有難う」
「いえ、仕事ですから」
「それでも…有難う」
白目の無いオルガの感情は目が動かなくて読み取りにくい。でも彼の羽が小さくフルフルと震えたのを見て何か心が動いているのだけは理解出来た。
オルガは先程のものとは違う、普通の服を用意してくれた。膝丈のスカートにレースの着いたブラウス。動きやすい服装に安心した。
オルガは私を部屋へと案内してくれて、食事を運んで参りますと出て行った。
部屋はとても可愛い。レースのカーテンに白の家具。ピンクの小物とか雑誌に出てくるような可愛いものが沢山あって驚いてしまった。それが私にちょっと元気をくれた。
私は落ち込んだ気分を、このままではいけないと立ち上がって窓へと近付いて外を見てみた。
「わぁ、凄い!」
外はヨーロッパ風の街並みである悪魔国とも森の木々で成り立つ獣人国とも違う、見渡す限り石造りの建物が沢山あった。吊り橋があちこちに伸びていて、通路代わりになってるみたい。高い場所に有るからちょっと怖そう。
この…お城、と言うのだろうか崖の岩場に掘るようにして作られたこの場所はとても見渡しが良く高台に有る。ファンタジー映画で見た事有るような地下帝国。地下じゃ無いけれど。
ノックの音が聞こえた。
返事をすると、オルガが食事を持って来てくれた。覗いて見ると色とりどりのお野菜が中心の美味しそうな内容だった。獣人国とは正反対。両方美味しそうなんだけどね。
「美味しそうですね」
「キ…いえ、栄養のある物を用意させました。気に入らなければ作り直させますので」
椅子に座り、頂きますと手を合わせて蒸し野菜を口に運んだ。ソースがまたクリーミーで野菜自体も甘くて美味しい!
「んんっ、凄く美味しいです!作り直して貰うなんてとんでもない」
パンもフワフワしてるし、芋のポタージュも美味しい。虫の国の食事はどうやら私の口に合うみたい。食事って大事だよね。
美味しいです、ともう一度口にするとオルガの口元が緩んだ気がした。私は用意された温かな食事を存分に堪能した。