第4章 虫の王
引っ張ると、簡単にスルリと帯は解けて落ちた。服のように巻かれていた布は既に服の形にはなっていなくて、肩に掛かっているだけ。
私は胸元を手で覆いながら、その布を引いて床へと落とした。
皆さんの視線が私に注がれる。凄く恥ずかしい。
「ふーん…変な体」
キリヤ様にそう言われて唇を噛み締めた。
「ええ、ブヨブヨしていて何だか気持ち悪いですわ」
「本当本当」
キリヤ様の両脇に控える綺麗な女性が私を見て鼻を鳴らした。ブヨブヨしていて、と言われて日頃の運動不足を悔やんだ。平均的だとは思うんだけど、確かに私は虫人の女の人のみたいに筋肉質の綺麗な体じゃ無い。もっと鍛えておけば良かった。
「ほら、もう一枚有るでしょ?」
キリヤ様の視線が私の下半身へと注がれているのに気付いて心臓が跳ねた。私が今身に着けているのは心許無い下着一枚のみ。それも脱がないといけないの?
「早く脱ぎなよ」
急かすキリヤ様に、周囲がニヤニヤと笑う。私は目元が熱くなった。でもこんな事で泣いちゃいけない。
「脱げって言ってんでしょ!」
ガンッ!とキリヤ様が前のテーブルを乱暴に蹴った。食べ物が零れグラスが倒れて、テーブルから転がり落ちる。「キリヤ様こわーい」と喜ぶ女性とは対称的に私は怖くて体をビクつかせた。
「…は、い」
怖い、手が震える。それでも私は下着をとめる紐へと手をかけると引っ張った。緩んだ下着は床へと落ちた。体を固くして、手で胸元と下部を隠す。好奇の視線が向けられとても恥ずかしい、恥ずかしくてたまらない。
私は赤くなって小さく震える体に力を込めた。
「手を離して」
「っ…」
「手を離せって言ってんの!聞こえないの?それとも言葉が理解出来ない程の馬鹿なの?」
クスクス、ヒソヒソと小さく笑い話す音が聞こえてくる。それは全て私へと向けられた蔑みの感情だった。私は諦めてキリヤ様の命令通りに手を離した。してやったりと喜ぶ虫人の女性達。男性は興味深そうに私の体をじっと観察している。
どれだけ時間が経っただろうか、男の虫人がキリヤ様に提案した。
「キリヤ様、まだ見ていない所があるでしょう?もしかすると、そこから悪臭がするのかもしれません」
すると周囲の男の虫人も、頷き同意を口にする。
「そうですぞ、足を開かせ確認すべきです」
その言葉に血の気が引いて体が冷たくなるのを感じた。