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人外王の花嫁

第2章 悪魔の王


「さて、。こちらへ来い」

アダマンド様に手招きされて私は椅子から立ち上がった。近付くと脇に手を差し込み抱き上げ、彼は私を膝の上へと座らせた。
甘くてスパイシーな香りが鼻を掠めてくらりと眩暈がした。

「どうだ、腹は膨れたか?」

そう言いながらアダマンド様は私のお腹を確かめるように手で擦ってくる。いっぱい食べて膨れたお腹に触られるのは恥ずかしい。
私は恥ずかしさを誤魔化すように、必死で何度も頷いて見せた。

「ふむ、ちゃんと食べた様だな」

そう言って腹を撫でていた手を動かし、肩から胸、腰から尻に腿とその手が滑った。ふと、顔が近付いて来たかと思うと口元をペロリと舐められた。

「クリームがついていたぞ」

そう言われて恥ずかしさに顔が真っ赤に染まった。その姿を笑われて気まずさに視線を反らす。

「それにしても…そなたが美しく成長していて嬉しく思うぞ。それに…」

アダマンド様が腹の前で手を組み、私を背後から抱き締める。そして口元を私の首元へと埋めると、そこで大きく息を吸い込んだ。

「っぁ…」

首がゾワゾワッとして、その擽ったさに小さく声がもれた。アダマンド様はそんな事など気にせず、何度も何度も私の首元に鼻を擦り付けて息をする。
みっともない声を上げないように。私は固く目を閉じると、小さく震えながらも擽ったさに堪えた。

「それに、とても良い香りだ…」

「ひぁッ」

アダマンド様の舌が鎖骨から耳の下の柔らかな肌を舐め上げた。流石に我慢しきれなくて間抜けな声が出てしまった。

「何だ、感じておるのか?あぁ、間違いない。お前は感じておる…かように匂いが、更に…」

ゴクリとアダマンド様が喉を鳴らした。彼の呼吸が荒く私を抱き締める力も強くなっている。

「アダマンド、さま?」

「かように私を高ぶらせる香りは初めてだ…あぁ、何と旨そうな…やはり私の見立ては間違いでは無かった…」

彼が開けた口には鋭い二本の牙が見えた。それを私の首へと当てがう。その牙が私の肌を破ろうとした時、私は足をテーブルにぶつけてしまった。
ガチャンと音が鳴ってアダマンド様の動きが止まった。

「…我を忘れるとは」

アダマンド様は大きく息をつくと私を膝から下ろした。

「夜、私の部屋に来るよう。それまでは自由に過ごすが良い」

アダマンド様はそう言い残して私に背中を向けた。
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