第3章 獣の王
私を助けてくれたのは、ずっと会いたかったラウルフ様だった。ラウルフ様にやっと会えた。
ラウルフ様…
「お前は何であんな場所に居たんだ!そもそも、傷だって治ったばかり、で…っ?!」
ラウルフ様が私を心配して怒ってる。それも私には嬉しく感じてしまって、堪らずに抱き着いた。
「ラウルフ様、ラウルフ様…助けてくれて有難うございました」
「っ、…」
さっきまで興奮していてピンと立っていた尻尾が、ゆっくりと下がっていく。そしてラウルフ様は私を抱きしめると、首元に顔を埋めて匂いを嗅ぐように大きく深呼吸をした。
「、離せ」
「嫌です。だって離したらラウルフ様が逃げちゃうもの」
ラウルフ様の首元にしがみついて嫌々と頭を振る。逃げる、と口にするとラウルフ様が言葉に詰まった。やっぱり私から逃げていたんだ。頬を膨らませて絶対に離さないとアピールすると、ラウルフ様が観念したのか大きく吐息をついた。
「…分かった。逃げねーよ」
そう言ってラウルフ様が運んでくれたのは、さっきシーザーさんが連れて来てくれたお城の裏のブランコが有る所だった。白いお花畑の中に降ろされて、私は大人しく手を離した。
ラウルフ様がそんな私の隣に腰を下ろす。
「傷は…もう良いのか?」
ラウルフ様の視線が泳いでいる。私を心配してるんだ。だから私は膝立ちになるとラウルフ様の顔を両手で挟んで私へと向けさせた。そして真っ直ぐ向き合う。
「見て下さい。傷も何も残って無いです。目もしっかり見えてますよ」
「そうか…良かった…」
ラウルフ様は心底安心した様に息を付くと、やっと私と目を合わせてくれた。
「俺、またやっちまったと思って…また、殺しちまったと…」
ラウルフ様が私の手から逃げると、頭を抱えて蹲った。体が僅かに震えている。
「もう気に入った奴を食うのは嫌だ。…嫌なんだよ。でも…嫌なのに、お前の肉は誰よりも美味く感じて…あれから、食いたくて、食いたくて……」
すまない、と擦れた声で謝ったラウルフ様の様子に夜中に夢現で聞いた悲しそうな遠吠えを思い出した。
私は蹲るラウルフ様に手を回して優しく包み込むように抱きしめた。