第3章 獣の王
目が覚めて、私は早速ラウルフ様に会いに行くことにした。用意してもらった服を着て、朝食をしっかり食べる。今朝の朝食は出汁巻き玉子と一夜干しのお魚。温かいお野菜たっぷりのお味噌汁に玄米ご飯だった。
「玄米ご飯と言うのが体に良いんですよね?」
ニコニコと嬉しそうに私が朝食を食べる姿を見詰めるサナに、私は気恥ずかしく思いながらも元気なところを見せたくて朝食を残さず食べた。
ラウルフ様に会いたいと言うと、サナは今なら執務室に居るだろうと教えてくれた。私は早速出掛けることにした。
扉の前に護衛として控える犬さんとライオンさんに頭を下げてから、扉をノックした。でも中からの返事はない。
返事がない事に護衛の二人も不思議そうにしている。
「ラウルフ様、お出掛けなんですか?」
「いえ、部屋にいらっしゃる筈ですが…」
戸惑う護衛の二人の様子に、私はもう一度扉をノックした。
「ラウルフ様?」
そっと扉を開けて中を覗くと、そこには誰も居なかった。書きかけの書類が開け放された窓からの風に僅かに揺れていた。
ラウルフ様の事だ、きっと書類仕事に飽きてしまって部屋から抜け出したに違いない。私は先日、ラウルフ様がシーザーさんから逃げていた時の事を思い出した。
「有り難うございました。私、探してみます」
私はラウルフ様を探して屋敷を歩き出した。
「ラウルフ様?さっきそこに居たんだけどねぇ」
「あー、遅かったな。ついさっき行っちまったよ」
何処に行ってもラウルフ様は私が見つける前に居なくなってしまう。私の運が悪いのか、それとも…ラウルフ様に避けられているのかな。
「ちゃん、こんなとこまでどうしたの?ここは危ないよ?」
剣を打ち合う音が響く。いつの間にか兵士の訓練棟にまで来てしまっていたみたい。何と無く強面の動物さんが多くなって戸惑っていると、私に気付いたシーザーさんが声をかけてくれた。
「あの、ラウルフ様はこちらに来ていませんか?」
「ラウルフ?」
頷くと、シーザーさんが察したように視線を泳がして頭を掻いた。
「あー、もしかして起きてから一回も会ってないのか?」
「…はい」
あいつ、と呟いた後シーザーさんは大きく吐息をついた。シーザーさんは訓練していた部下に指示を出すと、私に着いて来るように言った。