第3章 獣の王
「様、ラウルフ様の事嫌いにならないで下さいね?」
ご飯を食べていると、サナが控え目に話しかけてきた。
「間違ってはいましたが、様が早く成長するようにと良いお肉を沢山使って料理長に料理を作らせていたんですよ?」
それはわかってる、事あるごとにしっかり食べろと気遣ってくれていた。夜だって早く寝ないと体に悪いからと暖かく抱き締めて眠ってくれた。
ちゃんと、わかってるよ。
「うん、嫌いになんてならないよ。ラウルフ様が凄く優しい人だって言うのはわかってるから」
そう答えるとサナが安心したように笑った。
「ささ、しっかり食べて下さいね。それでラウルフ様と仲直り致しましょう!」
「うん!」
私は頷くと、残りのご飯を掻き込んだ。
お風呂に入って、ラウルフ様のお部屋に行こうと支度をしていると部屋がノックされた。
「はい!」
サナが私の代わりに返事をして、扉を開けた。
「あらあら…」
そんな声が聞こえると、サナが私を振り返って笑って見せた。
「様、何かございましたらお呼び下さいませ」
そして頭を下げると、扉の向こうに消えてしまった。その代わりに中に入ってきたのは視線を泳がせながらばつが悪そうにしているラウルフ様だった。
「あー…その、だな………悪かった…」
ラウルフ様が言いにくそうにしながら口にして頭を掻いた。
「俺はてっきり、お前がまだ子供だとばっかり思ってて…本当にすまなかった」
勢いよく頭を下げたラウルフ様の姿に驚いた。けれど、彼がわざわざ謝りに部屋まで来てくれたのだと思うと、嬉しくなって私は立ち上がるとラウルフ様の元へと近付いた。
「ラウルフ様、私こそ怒ってしまって申し訳ございませんでした」
私の言葉に慌てるラウルフ様。
「あ、いや、お前が怒るのは仕方の無い事だ。飯も…俺と同じように人間は肉を食べると聞いたから…」
「はい、でもお肉ばかりは…」
「そうらしいな、シーザーの奴に聞いた」
すまなかった、とまた頭を下げたラウルフ様に私は手を伸ばして抱きついた。フカフカの胸元に顔を埋める。
「ラウルフ様。私の事、色々気にかけて下さって有り難うございました」
「…」
ラウルフ様がギュッと私を抱き締めた。