第3章 獣の王
「様、お体は如何ですか?」
「あ、はい、何とも有りません」
そう返事を返すと、サナがキャァと何故か黄色い声を上げた。うっとりとした表情で熱い吐息をつくサナ。
「ですよねぇ、だって何時も寝室から雌の悲鳴が絶えないラウルフ様が凄く優しくされてらっしゃったそうじゃ無いですか。素敵ですー」
護衛の者に聞きました、と目をキラキラとさせて話すサナに何だか誤解をされていると気付いて説明しようとしたのだけれど。
「もう、何時もは凄いんですよ?朝起きたら血だらけで酷い時は死んでたりしますし。それだけ様を大切にされてらっしゃるのですね、サナは感動しました!」
あげくに目を潤ませて、良かった良かったと喜ぶサナに…誤解だとは言えなかった。
「ささ、今日もラウルフ様にしっかりと食べさせるように言われています。朝食を食べましょう!」
そうして出された朝食は…お肉だった。朝からガッツリお肉はちょっと辛い。でも食べれるだけ幸せと思い直して口へと運んだ。
朝はサナがお城の中を案内してくれた。人間の私が歩いても、露骨に陰口を言われたり冷たい目で見られることは無かった。中には気安く声をかけてくれる人もいて、このお城はとっても過ごしやすい。
そして昼食。朝の肉料理の胃もたれを抱えたままに出された昼食は、やっぱり肉料理だった。
「ささ、沢山食べて下さいよー」
しかもどんどんと運ばれてくる。ホカホカと上がる湯気に肉の香ばしい香り。何時もなら嬉しいそれも、今は拷問でしか無かった。
「う、サ、サナ…私、そんなに食べられない」
「ちゃんと食べないと駄目ですよ!様にしっかり食事をして頂いてもっと大きくさせるように、とラウルフ様からきつく言われているんですから!」
そう言われて改めて目の前のお肉に目を向けた。食欲が無い。でもせっかく用意してくれたものを残すのはいけない、と私はフォークを手に気合いを入れたのだった。