第3章 獣の王
「ん、んん…」
頬に何かが当たる。気になるのだけれど、このモフモフした気持ち良い眠りから目覚めたくない。
ん…モフモフ?
私は我に返り目を開けた。すると、目の前にラウルフ様の寝顔。そしてピンと立った立派なお耳があった。
私が息を吐くと、ちょうどラウルフ様の耳に当たるらしく擽ったいのか息がかかる度にラウルフ様の耳がパタパタと揺れるのだ。
面白い。
私はフウッと息を優しく吹きかけてみた。
パタパタ…
フゥ…
パタパタ……
こ、これは癖になる。また息を吹きかけようとして私の視界が反転する。見上げれば寝起きで目がしっかりと開いていないラウルフ様のお顔が有った。
「何をしてるんだお前は…」
「あ、す、すいません、起こしてしまいましたか?」
「………………」
眠りを邪魔されて、不機嫌そうに私を見詰めるラウルフ様を緊張の眼差しで見上げた。
「そんな悪いことをする奴は…こうだ!」
「っ?!」
ラウルフ様が私の耳に舌を差し込んで来た。長くて細い舌が私の耳の穴に入り、好き勝手に蠢く。
「あっ、や、やぁ!」
「お仕置きだ」
ラウルフ様は悶える私を軽々と組伏せて、仕置きと耳をひたすら舐める。息と濡れた水音、擽ったさに腰がゾワゾワとしてしまって変な声が出てしまう。
「んあっ、ラウルフ様、やめ、てぇ…あんんっ」
笑いながら私を攻めていたラウルフ様がピタリと動きを止めた。良かった、止めて貰えた。私は半泣きでラウルフ様を見上げた。赤い顔で精一杯睨んでみる。
「ラウルフ様の意地悪」
「っ…」
ラウルフ様が大きく息を詰めた。そして慌てて私の上から退いて私を解放すると、ベッドの縁に座り込んで何やらブツブツと呟いている。
どうしたのだろう、もしかして怒らせてしまっただろうか?
「ラウルフ様…怒りましたか?」
心配になって顔を覗き込もうとしたら、急いで立ち上がり逃げられてしまった。本当に怒ってしまったのだろうかと不安になる。
「ラウルフ様、調子に乗ってしまいました…申し訳ございません」
「いや!いや…そんな事は無い。お前は気にしなくて良い」
そう言うと、バタバタと扉へと向かったラウルフ様。出ていく直前に「しっかりと飯を食え!」それだけを言い残して部屋を出ていってしまった。