第3章 獣の王
ラウルフ様と私は市に来ていた。初めて見るものが沢山有って、一体何に使うものなのか全くわからない奇妙なものまである。しかもそれらを二足歩行の動物が売っているのだ。とっても可愛い。
「ラウルフ様、あれは何ですか?!」
「あぁ、あれは中のハーブを燃やして煙を吸って楽しむもんだ」
「じゃあ、あの三角のは何ですか!?」
「あれは爪を研ぐ道具だ。…あれは珍しいな」
「ではでは、これは何ですか?!」
「これは交尾の時に雄の……って、お前は知らなくていい!」
迷子にならないようにと握らせて貰ったラウルフ様の服を引っ張っては気になるものを片っ端から質問していく。そんな私にも面倒臭がらずにラウルフ様は丁寧に答えてくれた。
「わぁ、可愛いです」
私は足を止めてそのお店に並ぶ髪飾りを眺めた。そのお店は手作りらしく花が粘土で精巧に象られていた。色鮮やかな花に目が奪われる。特に白くて小さなお花がついたピン留めは可愛らしい。
「何だ、こんなものが欲しいのか?」
「え、あ、その…」
欲しいけど、私はお金なんて持ってないし。私は笑って頭を左右に振った。
「だよな、お前にはこんなものよりデカい宝石を買ってやる」
それを聞いて私は思わず眉を潜めてしまった。気持ちは嬉しいけれど、宝石なんて欲しくないよ。
「ラウルフ様、私、宝石は要りません」
「何でだ?」
「だって、高価なものは怖くて着けられません」
「普通なら喜ぶだろうに、お前は変なやつだな」
不満そうなラウルフ様の手を、行きましょう、と引っ張った。
その後は二人でぶらぶらして、買い食いしたり見世物小屋を覗いたり。思ったより楽しくて私は獣の国を満喫してしまった。
「さて、帰るか」
「はい。ラウルフ様、今日は凄く楽しかったです。有り難うございました」
何だか名残惜しい。異世界に来て緊張してばかりだったから、こんなに楽しめたのは久し振りで良い気晴らしになった。それにラウルフ様が皆から好かれているのも分かって、私もちょっぴりラウルフ様に好感を持った。
ラウルフ様が私を抱き上げて地面を蹴る。夕日が森を赤く染めていた。その景色もとっても綺麗で、私はラウルフ様の腕の中でその美しさに見とれていた。