第7章 人外王の花嫁
二人の言い合いが段々と激しくなって来た。
「こっちの方がラウルフ様の好みなんです!」
「こっちの方がキリヤ様がお好きに違いない!」
二人共、もはや私にどちらのベールが似合うかでは無く、どうやって私にそれぞれの主の好みのベールを着せるかの争いになっていた。何と無く嫌な予感がしたので、気配を潜めてコソコソと扉へ向かう。
「「様!!」」
「は、はい!」
二人に呼ばれて私は体をビクつかせた。果てしなく嫌な予感がする…
「様は、こっちのベールが…いえ、ラウルフ様が一番お好きですよね?」
「何を言ってるんですか!様はキリヤ様を一番愛してらっしゃるのですよね?」
もうベールなんて全く関係の無い言い合いになっている。サナとオルガがベールを握り締めて、さぁさぁ答えてください!とばかりに迫ってくる。
た、助けて…誰か助けてぇ!
「え、えっと、えっと、そのー…」
どうしよう、と迷っていた所でノックの音がした。そして扉の向こうから、準備の具合を確認する声が聞こえるとサナとオルガが慌てて我に返った。
「あわわわ、こんな事をやってる場合じゃ無いです」
「時間が有りません」
サナとオルガが私を椅子へ座らせると、テキパキと服やお化粧の乱れ、髪の乱れを整えて行く。そして最後にティアラと一体になったベールをそっと私の頭の上へと飾った。
「残念ですけど、私の選んだものはラウルフ様との婚儀まで置いておきます」
「…アダマンド様のお隣に立つなら、このベールがお似合いですからね」
私は鏡を見て目を瞬いた。素敵なドレスに素敵なベール。お似合いです、と微笑んでいるサナとオルガ。
何だか幸せ過ぎて、つい涙ぐんでしまった。サナがそれに気付いて慌てる。
「あわわ、様泣いちゃ駄目です!お化粧が崩れちゃいますから!」
私を甲斐甲斐しく世話するサナやオルガの存在も涙に拍車をかける。サナがとっても慌てた。
「だ、駄目ですよ!我慢、我慢です!そ、そうだ!ほら、これ、これを差し上げますから!」
泣かないで下さいー、と言って何か小さな包みを差し出した。不思議に思いながらも受け取ると、サナが肩を竦めた。
「さっき、門の所で貰ったんです「王妃様に結婚祝いだ」って」
私は手にした包みを丁寧に開けた。
その中を見た途端、私は息を詰めた。