第7章 人外王の花嫁
「本当は様に変なものをお渡ししたく無いんですけれど、見てみたら大したものでも無さそうでしたので」
サナが鼻先をピスピスと動かしている。
「急に門の前で呼び止められたんですよ?」
私は自分が手にしたものを見おろして、心臓を高鳴らせていた。
「その人…どんな人、だった?」
包みを持つ手が、問いかける為に開いた唇が震える。私の様子にサナとオルガが不思議そうな表情を浮かべた。
「フードを被っていたので良くは見えなかったのですけど、傷だらけでした。とても大きな体で、目付きが物凄く悪い…………」
────蜥蜴でした
私はサナの言葉を最後まで聞かずに飛び出した。背後で二人の私を呼び止める声が聞こえる。
「おい、何かあったのか?」
「?」
「???」
廊下でキリヤ様、ラウルフ様、ルナール様と擦れ違った。三人が驚いた様に私の名を呼ぶ。それでも私は止まらなかった。
サナは門のところで声を掛けられたと言っていた。もしかしたら、まだ居るかもしれない。
もしかしたら、もしかしたら、これをくれたのは…
ウエディングドレスのまま、私は必死で走った。擦れ違う皆が驚いた様に私を見るけれど、そんなのは構わなかった。
「王妃様!?」
門番が走って来て息を弾ませているウエディングドレス姿の私を見て、驚いた様に声を上げて慌てて頭を下げた。私はそれに返事も返さずに周囲を見回す。
「っ、はぁはぁ…ここら辺で、フードを被った人を見ませんでしたか?」
「いえ、その様な方は…」
見回しても、サナが言っていた様な人は見付からなかった。居ない…
「!」
ラウルフ様が私を呼んで駆けてくる。その後ろからキリヤ様とルナール様も。
「、何か有ったのか?!」
そして白いタキシードに身を包んだアダマンド様まで慌てて駆けて来た。
皆が私を心配そうに見詰める。
私は一度目を閉じて気持ちを落ち着けた。そして大きく息を吸い込むと笑って口を開いた。
「……いえ、何でも有りません」
アダマンド様が手を差し出す。その手に私は自分の手を重ねた。そして王様と共に歩き出す。
私は愛する人外の王様達と共に歩んで行きます。
貴方の言うように、王様達を、自分を信じて。
私はキラキラと光る飴玉の入った瓶を、強く胸に抱き締めた。
END