第6章 蜥蜴の王
「やった!マジか?!」
ギャオウ、と歓喜に鳴いたカサドラさんが私の中から吐き出された白くて丸いものを持ち上げた。大事そうに壊さない様に持ち上げたそれを愛しげに眺める。
「真っ白で艶もある、硬度も問題ねぇ!ははっ、何だこれ…すげぇ嬉しいもんだな」
上から眺めてみたり、下から覗いて見たり。子供のように頬を染めて無邪気に喜ぶカサドラさんの手にした物が卵である事に気が付いた。
「こりゃ良い色になるぞ。もしかしたら、伝説の…初代王がそうだったような、漆黒の色になるかもしれねぇな?いや、何色でも良い、元気に産まれてくれたら…」
まるでドラマか何かで見た初めて産まれたての子供を抱いた父親の様な反応だった。
「、…良くやったな!良くやった!」
カサドラさんは私を抱き締めた。凄く、凄く嬉しそうに…
何だろう、嬉しそうなカサドラさんを見ていて私も何だか嬉しくなってしまった。感覚が麻痺して来ているのかな?
それでも、こんなに喜んでいるカサドラさんを見ていると…このまま、カサドラさんのそばに居てあげても良いかな、何て思ってしまった。
懸命に、一族の為に戦うこの人の、少しでも支えになるのなら…
恋じゃない、好きじゃない、きっと絆されただけだ。それでも、ちょっぴり…ほんのちょっぴりだけ、私はカサドラさんが嫌いじゃない自分に気が付いた。
カサドラさんはその卵を大事そうにフワフワの布に包むと、籠へ入れて私のそばへと置いた。
今は真っ白な卵が半日も経つと色が変わるらしい。その色や模様でその子供の力の強さや気性などが解るのだとカサドラさんが教えてくれた。
力の強い者ほど色が濃くなるらしい。模様の入った卵は魔力を持つ者で、そのそれぞれの模様によっても能力が違って来る。
他にも頭のいい者や性格の優しい者とカサドラさんは色々な卵の色や模様を教えてくれた。
そしてカサドラさんは待ち遠しいと本当に嬉しそうな笑みを浮かべて、私の前髪をかき上げると額へ優しく口付けた。
けれど…
擽ったい様な、そんな温かな時間も長くは続かなかった。
バタバタと部屋の外が騒がしくなったかと思うと、扉が激しく叩かれた。
「カサドラ様!カサドラ様!四王が…四王が攻めてきました!」
その言葉に私の心臓がドクンと不安に大きく跳ねた。