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人外王の花嫁

第6章 蜥蜴の王


「カサドラ!」

怯える私の様子を見たキドラさんがカサドラさんを叱るように呼んだ。カサドラさんは悔しそうに拳を握ると、憤りを隠しきれずに拳を震わせた。

「兄者、何でだ?!こいつは兄者の子供を孕んでねーし、王達は俺がせっかく送ってやった女共には見向きせず殺して捨てやがった」

何で上手く行かねーんだよ、と喚くカサドラさんにキドラさんが悲しそうな目を向ける。

「…駄目だ、もう一回だ。もう一回…兄者にはこいつの中に卵を産み付けてもらう」

「私は、もうそんな事はしないよ」

必死なカサドラさんとは対照的に、キドラさんはとても静かで…そんな様子を見たカサドラさんは、自分の気持ちを上手く伝えられずにもどかしそうにしていた。

「分かってんのか?!もう時間がねーんだよ!」

「それでも、私は誰かを犠牲にしなければ生き残れない様な…そんな国は嫌だよ」

「兄者…」

優しいキドラさん。そんなキドラさんの言葉に一瞬大人しくなったカサドラさんだったけれど、直ぐに頭を左右に振って鋭い目を向けた。

「駄目だ!駄目だ駄目だ!」

「それでも、私はもう子を残すつもりは無い」

カサドラさんがキドラさんの胸倉を掴んだ。

「なら、もう一回この女に媚薬を打ってやる」

「無駄だよ、もう私には彼女の香りへの抗体が出来てる。前みたいに我を失うことは無いよ」

キドラさんの冷静な言葉にカサドラさんが悔しそうに奥歯を噛み締める。

「…なら、兄者に媚薬を盛ってやる…兄者がこいつを抱きたくて堪らなくなるようにするまでだ」

「カサドラ!」

ニヤリと口の端を上げて笑うと、カサドラさんはキドラさんを解放した。

「…お前は、兄者の子を産んで一生ここで暮らすんだよ…一生だ」

檻越しに私を見つめるカサドラさんの瞳に暗いものを感じて鳥肌が立った。暫く私をじっと見ていたカサドラさんは、小さな舌打ちを一つ残して出口へと歩いて行った。

カサドラさんが居なくなって緊張の糸がとけた。私は体の力を抜いてベッドに両手をつくと、深呼吸をした。

駄目だ、カサドラさんには私を帰すつもりなんて全然無い。このままじゃ、キドラさんの子供を産むまであの悪夢の繰り返しになるに違いない。

私は一体どうしたら良いの?



ほっとした反面、これからの事を思って体が恐怖に震えた。
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