第6章 蜥蜴の王
お母さん──
お母さんは、お父さんの事が凄く凄く好きだった。
でもお父さんには「奥さん」と「子供」が居た。お母さんはお父さんにそばにいて欲しくて、約束を破って私を作った。
私が居ればお父さんがずっと自分と一緒に居てくれると思ったらしい。
でも実際はそうじゃ無くて、凄く怒ったお父さんはお母さんに会いに来なくなった。
でもお母さんは私を産めばお父さんが帰って来てくれると信じて私を産んだ。でも、お父さんはお母さんの元に帰ってくる事は無かった。
お母さんは「私を産まなければ良かった!」「あんたが居なければ、ずっとあの人と一緒に居られたのに!」と言った。
それからはお母さんは時々来る乱暴な人達から逃げる様に私を連れて移動した。
その度に「面倒臭い」「あんたさえ居なければ」と何度も言われた。「子供なんて産むもんじゃない」「男なんて自分の事ばかり。自分の利にならない事が有れば、直ぐに私を捨てる」と何度も呪文のように聞かされた。
男は信用出来ない、と言いながらもお母さんは男の人が居ないと生きていけない人だった。お母さんはとても可哀想な人。
でも、どれだけ怒鳴られて叩かれても私はお母さんが好きだった。
ある日、新しいお父さんが出来た。彼はお母さんが居ない時に私の体を触って来た。
彼は私が暴れたり、この事を誰かに言ったらお母さんが悲しくて泣くぞと言った。私はお母さんを悲しませたく無かった。それに気持ちが悪かったけれど、我慢していれば食べ物を貰えるから私は我慢した。
でもある日、仕事に出かけていたお母さんが忘れ物を取りに家に戻って来た。その時に私の服を脱がしていたお父さんを見付けた。
お父さんは「こいつが誘ったんだ」と私を指さした。お母さんは「最低なガキ!」と私を殴った。
それ以来、私の扱いが更に酷くなった。
僅かなご飯も食べさせて貰えず、お風呂も入れない。私は常に押し入れに閉じ込められるようになった。
でもお腹が減って我慢出来なくて、声を出しても殴られて、逃げようとしたらもっともっと殴られた。
イラナイ子なら、何故私を産んだの?子供なんて産まなければ良かったじゃない。私が大人になったら、絶対─────
でも……私はこのまま死んでしまうかもしれない。神様、助けて下さい。
何でもします、だから誰か助けて!
私は叩かれながら薄らぐ意識の中で必死で祈った。