第6章 蜥蜴の王
「きゃあああ!」
バシンッと音を立てた鞭は私にぶつかり、服を裂いて肌の薄い皮を破り血を滲ませた。軽い音と反して焼け付く様な痛みに体を捩る。痛い、凄く痛いよ…
「あッ、ぁ…」
呆然と涙を流す私を尻目に、カサドラさんが眉を潜めた。
「何だ、こんなもんで血が出るのか?まだ本気だしてねーぞ」
「ひっ?!」
鞭の感触を確かめる様に、数度地面へ鞭が打ち付けられた。その音を聞くと、何時それが自分に向けられるかと体が竦んでしまう。
「ん、こんなもん…かっ!」
「きゃああ!」
脇腹から腹部へと振り下ろされた鞭は、服を割き私の肌に赤い痕を残した。その力加減に満足したのか、続いて数度、カサドラさんは私へと鞭を振り下ろした。
「っ、や!あッ…」
痛みに涙を流す。逃げようとしても、頭の上で束ね拘束された手のせいで逃げる事も出来ない。
「おら、痛いか!?…お前が生意気なのがいけないんだ、よッ…なぁ、王妃様?…あぁ、お前はもう王妃じゃ無かったか」
痛みに顔を歪めて悶える私の姿に、興奮したカサドラさんが意地悪く笑った。でも、もう私が王妃じゃ無いって、どう言う事?
痛みに朦朧としつつも、私は彼へと視線を向けた。
「ははっ、気になるか?お前をさらった後、王達に教えてやったんだよ、お前に子供が出来ない事。それと…おまけに女を送ってやった。悪魔には悪魔の中でも極上の女を。獣には獣の女を…それぞれの王にな?」
その合間にもカサドラさんの鞭が私を打つ。
「しかも薬を持たせてやった。妊娠出来る薬、とッ、体を一時的に強化出来る薬、っだ…」
ビシン、バシンと鞭が私の体を痛め付ける。
「これで、お前の存在は、不要になった、と言う事っだ…人間より、同族の方が、良いに、決まってッ…るから、な!」
「うぁッ!」
大きく振りかぶった鞭が私を打つ。服はもうボロボロで、引っ掛かっているだけになっていた。皮膚が裂けて血が滲む。
「あははっ!お前はもう王妃でも何でもねーんだ、お前はいらないんだよ!」
カサドラさんが笑いながら私を鞭で打つ。そんな…私はもういらないの?私は子供を産む為に、産む為だけに………私は、イラナイ子なの?
「分かったか?!お前は蜥蜴の子を産むしかねーんだよ!」
「っ!」
一際強く打たれて、私は体を跳ねさせた。意識を失う瞬間、キドラさんの慌てた声が聞こえた気がした。