第6章 蜥蜴の王
「きゃああぁ!」
私は叫び声を上げながら飛び起きた。心臓が煩いほどに音を立てている。これは何時も見る嫌な夢。でも今までとは違って、しっかりと内容が頭に残っている。
夢の中で私は酷くお腹が空いていた。そして何度もぶたれるのだ。
私を叩いているのは…お母さんだった。
私にはお母さんなんていない…あの夢は一体何?
夢…本当に……夢?
「……だから、帰して…」
「…んども…駄目…」
声が聞こえて私はベッドから立ち上がった。ベッドのそばに服が用意されていて私はそれに着替えた。鎖が有るので扉の直ぐそばまでは行けなかったけれど、声が聞こえる所まで近づいた。
二人は余程興奮しているのか、扉越しにも声が聞こえて来る。
「カサドラ、分かってくれ!こんな事は間違ってる」
「間違う?俺が?…間違ってるのは兄者だ!分かってるのか?!もう俺達の一族は限界なんだよ!」
「分かってる!でも、こんなやり方は駄目だ!それに彼女が可哀想だ!」
どうやら、扉の外で話しているのはカサドラさんとキドラさんみたい。
「可哀想?そんなの関係有るかよ!」
乱暴な足音が聞こえて、それが部屋に入ろうとしている事に気付いて慌てた。オロオロとしている内に扉が開いて、私の姿を見付けたカサドラさんが私を鋭い目で睨み付けた。
「、よく兄者に取り入ったな?」
私に蔑んだ瞳を向けたカサドラさんが私の髪を掴んだ。
「痛いっ!」
「お前、まだ自分の立場を分かって無いみたいだなぁ?」
髪を乱暴に引っ張られる痛みに涙を浮かべた。そんなカサドラさんの行動を見たキドラさんが慌てて部屋に飛び込んで来る。
「カサドラ!手を離して!痛がってるじゃないか!」
「兄者は甘いんだよ!」
キドラさんの体を押しのけて、カサドラさんが私の鎖を掴んだ。首の直ぐ近くの鎖を持たれて、首がとても苦しい。そのまま凄い力で持ち上げられて、足が床から離れた。
「あ、ぐ、うぐっ…」
体重が首元にかかって苦しい。息が出来ない。私は足をバタバタと動かした。
「カサドラ、止めなさい!彼女が死んでしまう!」
「まだ能力は残ってんだろ?死なねーよ。とにかく、兄者の提案は却下だ。兄者にはこいつと交尾して子を残して貰う、必ずな?」
「カサドラ!」
キドラさんの声を無視して、カサドラさんが私を引きずりながら部屋を後にした。