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人外王の花嫁

第6章 蜥蜴の王


「っ、はっ!はぁ、はぁ…」

カサドラさんの手から解放されて慌てて息を吸い込む。咳き込みながらも呼吸を整えたところでカサドラさんの指が口内へ侵入して来た。
顎を掴まれ固定されると、指が確認するように口内を掻き回す。私の口内にさっきのが残っていないか、確認してるんだ。

「んうっ、ぐ」

「よし、ちゃんと飲んだな?」

カサドラさんが指を引き抜いた。私の唾液で濡れた指をペロリと舐めながらククッと喉を鳴らす。

「何を飲まされたか気になるか?」

カサドラさんが私へと詰め寄って来る。私は逃げる様に後退りしたのだけれど、壁に背中が当たって逃げ道が無くなってしまった。せめて、とカサドラさんを睨み付ける。

「一体…何を飲ませたのですか?」

私の問いかけに愉快そうに口の端を上げたカサドラさんが、私の顔のすぐ横に手をついた。そして体を屈めて顔を近づけてくる。距離が近い。カサドラさんの金の瞳がじっと私を見詰めている。

「その薬はな、お前を確実に妊娠させる為のもんだ」

そう言ってカサドラさんは私の下腹部へ手を這わせた。

「ここに注がれた種をちゃーんと、お前の体が受け入れる様に…そう言う薬だよ」

私はその言葉を聞いて血の気が引いていくのを感じた。

「お前は兄者の子供を産むんだ」

私はカサドラさんの手を払い除けた。そして逃げようと走り出したところで、鎖を引っ張られて転んだ。

「やっ、やだ!」

「諦めろ、お前に拒否権はねーよ」

私はアダマンド様、ラウルフ様、キリヤ様にルナール様…あの人達の子供を産む為に…
なのに、こんな、こんなのは嫌だよ!

「嫌っ、嫌です、お願い!離して!」

首輪を掴んで暴れる私を引きずったままに、カサドラさんが扉をノックした。そして返事を待たずに扉を開ける。

「離して!離してぇ!」

「兄者、入るぞ」

暴れる私を気にもせず、カサドラさんが中へと私を引っ張り入れる。暴れて抵抗しても、鎖でズルズルと引きずられ逃げる事が出来ない。

入った部屋の中は少しカビたような臭いがした。図書館で嗅ぐような沢山の紙の臭い。周りには積み上げられた本や乱雑に置かれた紙の束。見上げるほどに積まれたそれらが、所狭しと室内を占領していた。
でも、誰も居ないみたい?

「兄者?おい、兄者?!」

カサドラさんが大きな声で呼ぶと、むっくりと本の山の中から何かが顔を上げた。
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