第6章 蜥蜴の王
申し訳程度に体や髪を乱暴に拭かれ、また裸のままに鎖を引っ張られる。廊下ですれ違う蜥蜴族の人達が頭を下げながらも私を盗み見ているのを感じた。
恥ずかしさに俯き、胸元と下部を隠した手の震えを力を入れる事で止めた。負けるな私、と心の中で自分に言い聞かせる。
廊下を歩いている合間に外の様子を探ろうとしたのだけれど、やはり窓は無くて地中に掘られた穴の中を移動している様だった。
もしかしたら、ここは本当に地中なのかもしれない。
「おい!」
「っ!?」
ジャラリと音を鳴らしてカサドラさんが鎖を引っ張った。鎖を引っ張られる度に首が締まって苦しいので、引っ張るのは止めて欲しい。恨みがましくカサドラさんを睨むと、フンと鼻を鳴らされた。
「さっき言った事、覚えてるな?兄者に歯向かったらお前を殺す」
「………」
私はカサドラさんに返事をせず、唇を噛み締めた。そんな私の姿に舌打ちをしたカサドラさんが、何かを思い出したようにポケットを漁り始めた。
「あぶねー、忘れる所だったぜ」
何だろうと目を瞬いていると、カサドラさんが私の顎を掴んだ。その痛みに口を開けると、そこへ空かさず指を入れられた。
「ふっ、ぐ…」
その指先が何か丸くて小さな異物を舌へと押し付けて来た。何かを飲ませようとしてる。私はカサドラさんの指を思い切り噛んだ。
「っ、ちっ!」
指を噛まれて痛みに顔を歪めたカサドラさんが私の頬を叩いた。バシンと音がして頬の痛みに眩暈を覚えたのも一瞬で、直ぐに口の中の異物を吐き出さないようにカサドラさんが私の口を手で覆った。
「うぐっ、ん」
カサドラさんの大きな手が私の鼻まで覆って呼吸を妨げる。息が出来なくて苦しい。壁へと追い詰められ、逃げぬ様に押さえ付けられた。
手を離して欲しくてカサドラさんに視線を送ると、物言いたげな瞳が私をじっと見詰めてきた。口の中のものを飲み込めと言うのだろう。
「っふ、ふぅッ、んぐ!」
飲み込みたくない。何とか逃げ出せないものかと暴れる。でも足をバタつかせても、手でカサドラさんの腕を叩いても離してはくれなくて。そうこうしている内に息も限界に近付いて頭がクラクラして来た。
「うっ…ぐ……」
目の前が涙で滲む。
「…飲め」
低く囁かれ、私は生理的に喉を鳴らし異物を飲み込んだ。カサドラさんが満足そうに「いい子だ」と口の端を上げた。