第6章 蜥蜴の王
土のでこぼこした床が冷たくて痛い。あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。牢屋へと連れてこられる時に通った通路には窓も無く、本当に穴の中を移動しているみたいだった。
「寒いよ…」
着るもの一枚身につけておらず、牢屋の中には何も無い。それにさっき飛び散った悪魔族の人達の血を浴びたままだった。既に血が乾燥して固まって来ている。
ふと、こちらに近付いて来る足音が聞こえて体を強ばらせた。出来るだけ牢の奥の方へと移動して檻から距離を取る。
「おい、開けろ」
「はっ!」
檻の向う側、そこに姿を見せたのはカサドラさんだった。カサドラさんは見張りの蜥蜴族の人に命令して扉を開けさせた。そして中へと入って来た彼から少しでも逃げようと私は更に身を縮めて後退りした。
「、こっちに来い」
命令されて、私は頭を左右に振って拒否した。その態度が気に食わなかったのか、カサドラさんの尻尾が激しく床を打った。大きな音を立てたそれが檻の中で反響する。その激しさにビクンと体を震わせた。
「俺様がこっちに来いって言ってるんだ…来い」
一層低い声で言われて、私は唇を噛みながらのろのろと立ち上がった。そして重い足取りでカサドラさんへと歩いて行く。
「最初から、大人しく俺様の言う事を聞いておけば良いんだよ」
満足そうな表情を浮かべたカサドラさんが私の髪をまた掴んだ。
「っ!」
痛い。離して欲しくてもがいていたら、カシャンと金属の音がして、首に違和感を覚えた。何だろうと触れてみると、首に金属の輪が嵌っていた。
これって…首輪?
「ククッ…なかなかにお似合いだなぁ、王妃様?」
私の髪を離したカサドラさんの手には、首輪から繋がった鎖が握られていた。まるでペットの様に首輪をつけられ、鎖で自由を奪われる。その事に呆然と立ち尽くした。
「おら、呆けてんじゃねーよ。行くぞ」
「うっ!」
鎖を引っ張られて喉が締まった。カサドラさんは容赦無く私を半ば引き摺りながら何処かへと歩き出す。
「悪魔の血で汚れたままじゃ、流石に兄者に申し訳ねーからな」
そんな事を口にしたカサドラさんに皆が道を開けて頭を下げた。そんな中を裸の、鎖で繋がれた私を連れて歩くカサドラさん。
私は、これから一体どうなってしまうの?
アダマンド様、ラウルフ様、キリヤ様、ルナール様…私はどうすれば良いですか?