• テキストサイズ

人外王の花嫁

第6章 蜥蜴の王


「何で…」

「何で?…言っただろーが、『また近い内に』ってな?」

私の問いかけに、カサドラさんが口の端を上げて笑った。
ここは何処なんだろう?見回してみると、ぼんやりとランプで照らされた室内は洞穴の様に土が剥き出しになっていた。一瞬、虫の国に似ているとも思ったけれど、空気の湿り具合や冷たさが全く違う。閉鎖された空間。

私はここに無理矢理連れて来られたのだろうか。

誰かに連絡を取らなくちゃ。私はアダマンド様から頂いたペンダントの事を思い出した。強く願えば思いが届くペンダント。
私は徐ろにペンダントを服から引っ張りだそうとした。すると、私のすぐ横を何かが通過した。ドンッと音を立てて壁へと突き刺さったものは槍だった。
それが皮一枚を切り裂き、ペンダントの紐を断ち切ったのだ。ペンダントは私が握る前に床へと力無く落ちて行った。

私の首から薄く血が滲む。

「余計な事、するんじゃねーよ…殺すぞ」

カサドラさんが低く唸ると、私へと近付いて来た。そして私の髪を鷲掴む。

「っ、痛い」

私の髪を掴んだカサドラさんは、そばに居た蜥蜴族の人に私を差し出した。カサドラさんが髪を掴んだまま私を物かなにかの様に扱うので、乱暴に扱われる度に髪が軋んだ。

「おい、こいつの身につけている物を全て剥がせ。一つも残さず取り上げろ。裸にして…牢に入れておけ」

「っ?!や、やだっ!嫌です!」

聞こえた言葉に抵抗して暴れたけれど、私の髪が数本抜けただけで逃れる事は出来なかった。

「分かっているだろうが、手は出すなよ?出したら…殺す」

カサドラさんの迫力ある脅しの言葉に、顔色を変えながらも敬礼をして見せた蜥蜴族の人が私の腕を掴んで引っ張った。



蜥蜴の国

蜥蜴族は表面が細かな鱗で覆われ、大きな体の二本足で歩く爬虫類の様な外見をしている。爬虫類独特の縦型の瞳孔に尻尾、舌は蛇の舌のように先端が二つに別れている。その中でも王族は頭に角を生やし、まるで外見は竜の様だ。
気性は荒く、攻撃的で血の気が多い。
昔、人間の世界を侵略しようとして他の王達の反対を受け滅びてしまった国で、今は純粋な蜥蜴族の姿を見るのも珍しいらしい。


衣服を取り上げられて裸のまま牢屋へと入れられた。王様達に貰ったプレゼントも全部取り上げられてしまった。
剥き出しの土の床が冷たい。私は牢屋の隅で体を丸め座り込んだ。
/ 278ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp