第5章 魔物の王
「もう、ルナール様ってばせっかく格好良いのに…口の端にカップケーキついてますよ?」
笑いながら手を伸ばして口元からケーキの欠片を取ろうとしたら、その手を取られた。そしてギュッと手を握りルナール様が私をじっと見詰めてくる。
「手…じゃ、無くて…の、口、で、取って」
突然のおねだりにトクンと心臓が跳ねた。ルナール様が私をじっと見詰めてる。だからそれが冗談とかからかいでは無くて、本気なのだと分かった。
私は高鳴る胸に頬を熱くしながら、ゆっくりと唇を近付けた。そしてルナール様の口の端についたケーキの欠片を舌でペロリと舐め取った。
ルナール様と間近で視線が重なる。すると、ルナール様が不意に身を乗り出して…私に口付けた。
「んっ…」
舌で私の唇をこじ開けて、私の口内を探って来る。その動きはとてもたどたどしかったけれど、必死さが伝わって来てやけにドキドキした。
「んっ、はっ、ふッ…」
私も応える様に舌をルナール様のものへと擦り付ける。舌の裏を擽り、舌同士を擦り合わせ…するとルナール様は直ぐに動きを覚えて真似して来た。
「っ、う、ん…」
舌先で丁寧に歯列をなぞられ、口蓋を擽られる。探る様に、私の反応を見ながらされるキスは長く、飽きる事無く続けられた。
だから唇が離れた時には、私の体は力が抜けて肩で息をつく程になっていた。
「…かわ、い…交尾、したい…」
ふらついた私の肩をルナール様が支えてくれる。そんなルナール様から聞こえた言葉に驚いてルナール様を見ると、照れた様に視線をそらされた。
「昨日の、が、交尾、だって…聞い、た」
あぁ、それでナグル様のお部屋に行った時にルナール様の様子がおかしかったんだ。
「僕、知らな、くて…ごめん、なさっ…、嫌、じゃ、無かった?」
心配そうなルナール様に小さく笑うと、私は頭を左右に振った。
「嫌な訳無いじゃないですか!私はルナール様のお嫁さんですよ?」
「、が…」
お嫁さん、と繰り返したルナール様の頬が歓喜に染まる。
「が、僕の、お嫁、さん」
繰り返して感じ入っているルナール様が、頬を染めてプルプルと震えている。か、可愛い。
「、僕のっ」
「きゃあぁ!」
突然抱き締めて来たルナール様と二人、勢い余って噴水に落ちてしまった。