第5章 魔物の王
その後、意識を失ったナグル様は部屋へと運ばれて行った。あんな大怪我で私達の帰りを待っていたんだ、余程無理をしていたんだと思う。でも命に別状は無いと聞いてホッとした。
私はお風呂に入る元気が無かったから、メイドさんに手伝って貰い体を拭いて着替え、ベッドへと横になった。
心配したルナール様が私の手を握っている。
「、痛い?」
ルナール様の問いかけに私は小さく頭を左右に振った。もう痛みは無くなって、頬の腫れも引いてきているに違い無い。
「大丈夫ですよ、もう痛く有りませんから」
「でも…」
不安そうなルナール様の頭を優しく撫でる。
「胸…胸に、痕が、ついてた」
そう言われて小屋での出来事を思い出した。カサドラさんに容赦無く掴まれた乳房はカサドラさんの指の痕をくっきりと残して青くなっていたのだ。
「見せて…」
ルナール様の瞳がじっと私を見詰める。
「もうそこも痛くないですよ?」
「…見る」
ルナール様は自分で見ないと納得が出来ないのだろう、私はネグリジェの胸元の紐をゆっくりと解いた。緩んだ胸元に露わになった乳房は、まだ薄らとカサドラさんの手の痕を残していた。
ルナール様が手を伸ばしてその痕に触れる。そして不機嫌そうに眉を顰めた。
「何か…凄く、嫌な、気持ち」
ルナール様が自分の胸元を掴んで苦しそうに顔を歪めた。
「ルナール様、大丈夫ですか?」
その様子が心配で問いかけたのだけれど、ルナール様は問いかけには答えずに私のネグリジェの裾へと手を伸ばして来た。
「もっと、確認…する」
「ルナール様?!」
驚いて声を上げても、ルナール様は気にせずに私のネグリジェの裾をたくし上げてしまった。
「他に、何、されたの?」
確認する様にルナール様の手が私の腹部を撫で回す。そしてその手が下へと下がって下着へと触れた。
「っ!?」
「ここ…ここは、触られた?」
ルナール様の目が何時もより厳しい。怒ったように問い詰めてくるルナール様に戸惑った。ルナール様は私が答えるまで許してくれなさそうで、私は仕方なく頷いて見せた。するとルナール様の眉間に皺が出来た。
「何で、触らせた、の?何で…僕、以外が…に、触る、の?…そんなの、嫌だ…」
唇をへの字に曲げて、泣きそうな表情でプルプルと震えるルナール様はそれはもう可愛らしかった。