第5章 魔物の王
「ルナール様、申し訳ございませんでした…私がルナール様の言いつけを守らずに、アモロ遺跡に行ったりしたから…」
私が言う事を聞かずにアモロ遺跡に行ってしまったから、こんな事になってしまったんだ。ナグル様の腕もあんな事になって…情けなくて、申し訳なくて涙が浮かぶ。
「私…私…っ」
ルナール様の手が膝の上で拳を握る私の手へと重ねられた。
「、謝る、のは…僕…」
ルナール様が私の手を取り、唇を押し当てる。
「ちゃんと…に、話していたら、も、ナグル、も、危ない目に、あわな、かった…ごめん…」
私はルナール様の言葉に頭を左右に振った。どっちが悪いとか言い出すと限りが無いから、私はルナール様をただ抱き締めた。そしてそれに答えるようにルナール様も抱き締め返してくれた。
馬車がお城へと着いた。
「ルナール様!姫様!」
ナグル様がよろめきながらも駆けてきた。そのナグル様の片方の腕は無くなっている。
「姫様、ひめ、さま…良くぞ、良くぞご無事で…」
ナグル様は涙を流して私の前で膝まづいた。私の腫れた頬や破れた服がマントの隙間から見えたのだろう、顔を歪めて頭を下げた。
「ルナール様、申し訳ございませぬ、私が、私が姫様をアモロ遺跡になどお連れしたばかりに…姫様が、姫様が…」
「ナグル様…」
私はナグル様のそばで膝をついた。
「お詫びを…死んでお詫びを致しまする!」
必死で泣きながら地面に額を擦り付けるナグル様に、ルナール様が近付く。そしてナグル様の残った方の手を取った。
「ナグル…ナグルは、悪く…無い。そんな怪我、しても、城に、知らせて…くれた」
「いいえ、私が…姫様を守りきれなかった私が悪いのでございます!死んで…死んでお詫びを…」
「ナグル!」
ルナール様の厳しい声が響いた。普段からは想像出来ない様な一喝にナグル様が口を閉じる。
「を、守って、くれ、て…有難う。仇、討てなくて、ごめん、ね?」
ルナール様の手が優しくナグル様の腕が無くなった方の肩を撫でた。ナグル様は我慢が出来ないと顔を歪めると、盛大に泣き出した。
「うおぉん!ルナール様ぁぁ!」
泣きながらしがみついて来るナグル様に一瞬戸惑いの表情を浮かべたルナール様も、小さな吐息をついて表情を緩め、ナグル様の体を抱き返したのだった。