第5章 魔物の王
「王、王妃様、こちらを…」
スライムの兵士さんが、マントを差し出した。ルナール様はそれを羽織ると、私の肩にもそっとそれを被せてくれた。
「、帰ろ…」
「はい!」
私は立ち上がろうとして失敗した。よろめいた私を抱きとめたルナール様が屈んだと思ったら、私を抱き上げた。
「きゃ!」
慌ててルナール様の首元へ腕を回す。必死でしがみつくと、私を横抱きに抱き上げたルナール様が満足そうに目を細めていた。
「ルナール様、私、重いですよ?」
「大丈夫、は軽い、から」
私を抱いたままに歩き出したルナール様が、小屋から出るとワッと歓喜の声が上がった。
「王妃様!」
「王妃様、ご無事で何よりです!」
黒い水がみるみる人の形を取って行く。黒い海はスライムの兵士が形を変えたものだったみたい。私を助ける為に沢山の兵士が来てくれていたんだ。
そんな皆から、王、王妃様、と声が上がる。
「皆…有難う…」
ルナール様が優しく笑ってお礼を口にした。すると皆の歓声がさらに高くなった。
「我らが王、ルナール様!」
「ルナール様!」
歓喜に震える兵士さん達が拳を上げて声を上げる。ルナール様はその歓声を受けて嬉しそうに顔を緩めていた。
「ルナール様、何故私の居場所が分かったのですか?」
馬車に揺られてお城へと向かう。もう直ぐお城と言う所で気になって問いかけた。
「ナグルが、城に…戻って来た」
「ナグル様、ご無事だったんですね?!」
頷いたルナール様に、良かった、と安堵の息をついた。
「それで、赤い髪の、女が関係してるって、聞いた、から…」
赤い髪の魚族の女の人が関係してると聞いて、それで何故私の居場所が?首を傾げると、ルナール様が薄く笑った。
「あの女の人、が、あの時話してたの、城の、兵士…だから、問い詰めたら、情報を、流して、たって…」
「えっ、お城の兵士さんって…その人達の事覚えてたんですか?」
だって、お城の兵士さんって言ったらさっき見ただけでも沢山居たし…お城に戻ればもっともっと沢山居るに違い無い。
「もしかしてルナール様…お城の人、全員の事を覚えている、とか?」
私が盛大に驚いていると、問いかけに当然とばかりにコックリと頷いたルナール様が不思議そうに首を傾げた。
…ルナール様って、実は凄い人なのでは?